新作を月4本+過去作400本以上が読み放題。岸田家の収入の9割を占める、生きてゆくための恥さらしマガジン。購読してくださる皆さんは遠い親戚のような存在なのです!いつもありがとう!【有料部分の感想や一部引用を、SNSなどで投稿してくださるのも大歓迎です★】
岸田奈美|NamiKishida
年末のある日とつぜん、部屋の天井が落ちて、上階の汚水が流れこんできたときの限界記録。
比較的多くの方の目に触れてしまったnoteを集めました。
母が心内膜炎で入院、祖母は認知症が悪化、犬は大暴れで……岸田家の危機に、祖父の葬儀、鳩の襲来などが続々と!「もうあかんわ」と嘆きながら毎日更新した2ヶ月の記録。ライツ社から発刊した同名の書籍に収録していないエピソードも。(イラスト:水縞アヤさん)
NHK BSプレミアムドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」の原作エッセイ・撮影現場レポートのまとめ。ドラマは“岸本七実”が主人公のトゥル〜アナザ〜スト〜リ〜なので、読んでから観ても楽しめること大請け合い!
『人と防災未来センター』でズーンと沈んだ気持ちを抱えたまま、やや猫背で神戸の街をさまよった。(前置きの話) 母とわたしと弟は、横並びではなく、少しずつ間を開けて縦に並んで歩いた。二十連勤目のひょっこりひょうたん島の面々のような様相だった。 せっかく家族そろっての休日だから、買い物でもしてくかと。無理やり思いついて、服屋に入った。縦に並んで。続々と。 神戸元町の服屋で弟のシャツを選んでいると、母と同じぐらいの年の女性店員さんが、話しかけてくれた。 「ええ天気でよかったで
一月の始め、NHKのディレクターさんからメールが届いた。 『クローズアップ現代』というニュース番組で、阪神・淡路大震災の特集をするから、ゲスト出演してほしいとのことだった。 「岸田さんは神戸のご出身なので」 地元を認識してもらえることはありがたい。でも、いつもウッと言葉に詰まってしまう。 うん、まあ、神戸っちゃ神戸なんやけどもね。みんなが想像する、海と洋館のきれいな神戸ではないのよ。北区なんよ。おもっくそ六甲山の裏やから、海など1ミリも見えへんし、なんなら気温も4℃ぐ
予想もしてないメールが届いたのは、夕方だった。 『三年ほど前に、たいへんご迷惑をおかけした息子の母です』 しんどめの仕事が終わって、ボーッとマグカップにお湯をそそいでいたわたしは、すぐに手を止めた。 あっ。 「あの時の!?」 思わず、でっかい声が出た。 名前も、顔も、声も、まったく思い出せないのに。だって会ってないから。一度も会ってないのに、息子さんとは何度も話したことがあるような気がしている。 3年前、SNSで、わたしは彼に「生きる価値なし死ね」と言われた。
わたしにタイムマシンを教えてくれたのは『ドラえもん』だった。 あのタイムマシンには、船時法というルールがある。過去へ戻っても、地球の歴史を変えるような行為をしてはいけない。 ルールを破れば、タイムパトロールのお縄についてしまうぞ! わたしは、密かに思っている。 タイムマシンは、とても素晴らしくて、とても悲しい発明なのだと。 なぜ突然、こんなことを書きたくなったかというと、 『藤子・F・不二雄がいた風景』 という本を読んだからで。 藤子・F・不二雄生誕90周年を記
あけましておめでとうございます! 今年もおそらく予測不能な日々を送ることになりそうなので、できるだけ小さく、しょうもなく、“小粒な目標”を立てていこうと思います。 眉毛を書くペンを買います。一回ボキボキに折れてから、なんか買えずにいて、ずっと茶色のアイシャドウやシェーディングの、別の粉でしのいでました。この一年間、みなさんがわたしの眉毛だと思って見てたものは、実は粉なんです。 嘘ついてて、すみませんでした。 しかし粉ってやつぁ、案外いけるもんだね。 大粒な目標として
2024年も、呼吸をするように、エッセイを書くことができました。この場所があるから、どんなことがあっても、エイヤと笑って走ってくることができました。 読んでくださった皆さんのおかげでっしゃい。 一年間でいっぱい読んでもろたエッセイ1位〜2位を紹介します。 ……が、その前に! 【お年玉だよ!初月無料キャンペーン】 岸田奈美が恥をさらし、 ものを書き、 家族で暮らし続けるための 「キナリ★マガジン(月額1,000円)」 1月1日〜1月10日まで、初月無料クーポン配布し
こないだ、京都に泊まったんです。 次の日、朝から仕事があるってことで。いや、それ自体はめずらしいことやないんですよ。とある会社の朝礼で、わたしの浮いたり沈んだりが激しい半生的なものをね、チョチョチョーッと話してくれやと、おっしゃっていただいて。 わたし、そういうの、嫌いじゃないわ。 アットホームな会社にお邪魔してね、始業前をいつもよりちょっとファニーに盛り上げる余興。日常のスパイス。ハイッ、今日も一日がんばりましょー!ほなねー!元気出してこー!ってね。 とっても楽しい
一生に一度起こるはずのことが、一年に一度起こり、一年に一度起こるはずのことが、一週間に一度起こる。それがわたし。 引きの強い女と言ってもらえると、なんか慰められてるような気がするが、実はちょっと違う。ここには壮大な自業自得も含まれている。 騒動の始まりは、一年前の冬だった。 「今年はクリスマス会をしようと思うんです」 福祉施設の所長さんが言った。 うちの弟が、たいへんお世話になっている施設だ。所長さんも苦労してきた。なかなか物件を貸してくれる人がいなかったり、地域へ
こんなわたしにも特技がある。 たこ焼きを焼くのがうまいと、よく褒められる。 わたしが大学生一回生の頃、タコパなる文化が流行りだした。どいつもこいつも、タコパ、タコパと囃し立て、やれ岡山やら徳島から出てきたばかりの友人に目をつけては、下宿先に大勢でなだれ込んでいた。 浮かれやがって。 奴らはドン・キホーテで、だいだい2980円ぐらいで投げ売りされている、電気たこ焼き器を買って。さらぴんで、まだ油の酸いも甘いも知らん、ちょっとした下ネタで泣き出してしまいそうなほどウブなた
2024年9月。 フランス旅行中に、一枚の写真を買いました。 買いましたってーか、気づいたら買ってました。 あの有名な、クリニャンクールの蚤の市にて。 ズラーッと3,000店以上のアンティークショップが並ぶ市場をね、わたし、歩いてたんです。 蚤の市といえど、骨董品が多くて、かなり高い。 食器も雑貨も、日本ではなかなか売ってへんぐらい、状態がよくて、ごっついオシャレなんやけどね。 なんもかんも高くて、買われへんなあ。 円安やしなあ。 うおーっ、ヴィンテージのテレ
ぼんそわ〜る! 岸田奈美です。 世の中でなんらかの騒ぎが起きると、宝くじ4等賞が当たるぐらいの確率で、わけのわからん入射角の巻き込まれ方をすることがあります。 これについては、お知らせの最後のこぼれ話にて。 1.Podcast『岸田奈美のおばんそわ』スタート三年ほど続けてる「DM全部読み上げる岸田奈美のスペース」が、このたび進化しました〜〜〜ッ! 『岸田奈美のおばんそわ』Podcast(音声番組)が爆誕! プロなプロデューサーや放送作家のお仲間に入ってきてもらって
わたしはライブ配信とかよくやってるもんで、 「なにをやっても自信が持てなくて、毎日が不安です」 これ! これを相談されること、めっちゃ多いねん!ばく然とした不安たちの寄合所みたいになる時がある! ふむふむ、よくぞ送ってくれやんした。あなたの不安をバシッとたくすために、この岸田奈美が華麗に答えてしんぜ…… わかる〜〜〜〜! 自信とか、持てへんよな。 わたしは以前、大人になったら自己肯定感はどんだけ頑張っても上がらないから、諦めて、自信を増やそうって話をしました。
「もともと家族やないから、家族でおることに努力がいるねん」 どっかの誰かが言っていたのを、思い出した。 夫婦とか義両親とか、もともと家族やなかった人たちが、今日もひとつ屋根の下で家族であろうと、のたうち回りながら頑張ってるんのだ。 初めて脚本を書かせてもらったラジオドラマ『FMシアター 春山家サミット』の現場を見学しながら、わたしは考えていた。 ↓脚本を書いた経緯はこちらから NHKの同年代のディレクターから、 「よかったらリハーサルの現場に来ませんか?」 と誘
「どんな題材でもいいので、ラジオドラマを書いてみませんか?」 突然、メールが届いた。脚本なんて書いたこともない。書ける気もしない。なんかの間違いやろかと聞き直したら、 「大切なのはセリフです。岸田さんが書くセリフには、ニヤッとしたあと、ハッとさせられました。書けますよ!」 あら、そうかしらん。嬉しいわん。 わたしのはエッセイなので、ニヤッ&ハッ砲を撃ったのはわたしではなく、そばにいた家族や知人の手柄のような気もするけど、 恩は書いて返しましょう。 そういうわけで、生
先週、「声」という短編小説をのせました。 これね、実は、一年前に書き終わってたんです。 ウジウジして、ずっと載せられなかったんです。後先考えずにグワーッと走り出してから困り果てる、自業自得界の超新星である、このあっしが。 こわくて。 ずっと、エッセイを書いてきました。家族が大変な目にあったとか、ルンバがハチを食うとか、書くことには困らん日々でした。 でも、ほら、そういうのはね。どんだけおかしな話でも、実話やから笑えるってのが、あるじゃないですか。実話やから応援しても
これが最後の仕事になる。 できることなら、最後になんてしたくない。でもだめだ。日を追うごとに、働き続ける自信が腐り落ちていく。 総合病院の受付の裏側、患者からは見えない事務室がわたしの仕事場だ。デスクの上に積み重なっている手紙を、一枚、そっと手に取る。 ひどい字だ。 差出人の名前もない。 『待合室の金魚の目つきが悪い!通院のたびに動悸がする!』 知らんがな! そう言いたい。もう捨てたい。ああ泣きたい。それでもわたしは、この紙の折り目をていねいに伸ばして、ペンを取ら