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弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった

弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった

高校から帰ったら、母が大騒ぎしていた。
なんだなんだ、一体どうした。

「良太が万引きしたかも」

良太とは、私の3歳下の弟だ。

生まれつき、ダウン症という病気で、知的障害がある。
大人になった今も、良太の知能レベルは2歳児と同じだ。

ヒトの細胞の染色体が一本多いと、ダウン症になるらしい。
一本得してるはずなのに、不思議ね。

「良太が万引き?あるわけないやろ」

ヒヤリハットを、そういう帽子

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一時間かけてブラジャーを試着したら、黄泉の国から戦士たちが戻ってきた

一時間かけてブラジャーを試着したら、黄泉の国から戦士たちが戻ってきた

※下着のお話なので、苦手な方はご注意ください。

わりと、こだわりの強いタイプです。
でも、これだけは決めているんです。

「モテている女」のアドバイスにだけは、一切のプライドをかなぐり捨て、従うことを。

東にパーソナルトレーニングジムがあると聞けば、私財を投じて馳せ参じ。
西に3kg痩せ見えパンツがあると聞けば、半月間もやしをすすることになろうと手に入れる。

情報に振り回されすぎて、5日間絶

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車いすの母とミャンマーに行ったら、異国の王様だと思われた

車いすの母とミャンマーに行ったら、異国の王様だと思われた

2016年11月。
土埃と魚醤の匂いがするミャンマーの市場で。
私は立ち尽くしていた。

車いすに乗る母の背後には、何人ものちびっ子托鉢僧たちが、連なっていた。
逃げようとすれば、ついてきて。
そしていつの間にか、増えていて。

君たちは、あれか。ピクミンか。

母・ひろ実は困り果てた顔で「どうしよう」と、私に助けを求めた。
私は、見て見ぬフリをした。

私という人間は、理解できない状況に遭遇した

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櫻井翔さんと密室で30分間、対面したら2kg太った

櫻井翔さんと密室で30分間、対面したら2kg太った

2016年、3月。
私は密室で、櫻井翔さんと対面していました。
30分間も。無言で。

いや、本当だから。こじらせてないから。現実だったから。
……たぶん。

説明いたしますと。

我が社が総力を上げて取り組んでいる「ユニバーサルマナー検定」をね。
受講しにきてくださったんです。

嵐の櫻井翔さんが。

NEWS ZEROの担当者さんから
「櫻井翔さんが、ユニバーサルマナー検定の取材をしたいそうで

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最愛の母に「死んでもいいよ」と言った日

最愛の母に「死んでもいいよ」と言った日

「ママ、死にたいなら死んでもいいよ」

大好きな母に、私が放った言葉です。
高校2年生の時でした。

ひどい娘だと思いますよね。
私もそう思います。
でも、母を救う唯一の言葉でした。
それしか見つからなかった。

話は少しさかのぼりまして。

私が中学2年生の時、父が突然死しました。
働きすぎによる、心筋梗塞でした。

父は建築系ベンチャー企業の経営者で、めちゃくちゃカッコいい存在でした。めちゃく

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先見の明を持ちすぎる父がくれた、移民ファービーとボンダイブルーiMac

先見の明を持ちすぎる父がくれた、移民ファービーとボンダイブルーiMac

先見の明を持つ人って言うと。
うん。
織田信長だよね。

なんてったって、火縄銃を大量導入してっから。
戦国大名が「無理やがな」って匙投げてんのに、モリモリ導入してっから。
騎馬隊、木っ端微塵にしてっから。

でもね。
先見の明を持ってたのは、信長だけではねえのよ。

そう。

私の父、浩二。

岸田家の信長と言っても、過言ではない。

信長は兵に、火縄銃を与えた。
父は私に、火縄銃に匹敵するブツ

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歩いてたら30分で6人から「ケーキ屋知りませんか?」ってたずねられた

歩いてたら30分で6人から「ケーキ屋知りませんか?」ってたずねられた

これは、あなたのために書いている。

春から大学生や社会人になって、新しい環境にドキドキして。

大変なことが起こっている世の中で、将来や収入に不安を感じて。

家族や友人のいない都会で、漠然と寂しくなって。

そんなあなたのために、書いている。

ちなみにわたしは、このどれにも当てはまらないが「明日の運転免許試験の練習のために路上教習を受けに行ったら、縦列駐車に20回以上失敗して“もう勘でいきま

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スズメバチを食べたルンバ

スズメバチを食べたルンバ

事件は、オンラインで打ち合わせをしている最中に起きた。

ブオンッと風を切り裂くような音を立てて、視界の隅をなにかが横切った。

打ち合わせも終盤にさしかかり、雑談に移行していたので、私はふっと顔を上げる。

布団を干すとき、全開にしていた窓が開いたままだった。

ブオンッ。玄関でまた風を切り裂く音がする。

カナブンだろうか。バッタだろうか。そんなのが飛び込んでくるくらい、暖かくなったんだなあ。

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魂をこめた料理と、命をけずる料理はちがう

魂をこめた料理と、命をけずる料理はちがう

ラーメン屋の行列に並んでいた。

京都の自宅へ遊びにきた母が
「ラーメン食べとうて、しゃあない」
と、眼をかっ広げて言うのである。

母はたまに、そういう猛烈な天啓が下る。

車いすなので、こぢんまりした店にはひとりでフラッと入れないからだ。

ならば、どうしても食べさせたいラーメンがある!京都の名店!

麺屋猪一!

いつ来ても行列で、ミシュランにも載り、外国のお客でごった返してる。

おっ。

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家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった

家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった

私が住んでいる東京という大都会に、母と弟が来た。
ひろ実と良太が来たとも言う。

母からのリークによると、新幹線の中で、弟は何度も「奈美ちゃんは?奈美ちゃんは?」と、母に聞いていたそうだ。

なるほど、なるほど。
それはそれは猛烈な歓迎を受けるに違いないと、相応の準備をしていたら。

弟に真顔で「よう」と言われた。
ちょっとちょっと。話が違うじゃないか。

弟心は、秋の空ほど移り変わる。

さて、

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冬がはじまるよ〜のぞみ64号東京行き4号車で、槇原敬之が聴こえたら〜

冬がはじまるよ〜のぞみ64号東京行き4号車で、槇原敬之が聴こえたら〜

疲れていた。

泥のように疲れていた。

締め切りが迫った原稿を、ギリギリまで書き終え、気づけば朝すらも通り過ぎ、昼になっていた。

その足で用意をし、広島県福山市の講演会で2時間喋り倒した、帰りだった。

東京行き最終の新幹線・のぞみ64号の4号車に、走ってなんとか飛び乗る。

乗客は私と同じように皆、長い一日の終わりに放心しているようで、静かだった。

いつの間にか眠ってしまった私は、車内チャ

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思い込みの呪いと、4000字の魔法

思い込みの呪いと、4000字の魔法

「奈美と結婚しても、ダウン症の弟くんの面倒を見る自信がない」

高校生の時、付き合っていた彼氏が言った。

ショックだったのは。
明るかった彼の、思いつめたような表情でも。
とつぜん切り出された、将来の話でも。
障害のある弟を、否定されたことでもなかった。

っていうか結婚とか急になにを言い出してんねん、どうしてん。

なにより「弟は私に面倒をかける存在で、私がその面倒を見なければならない」と思わ

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24歳の弟は、字が書けない(はずだった、怪文書を読むまでは)

24歳の弟は、字が書けない(はずだった、怪文書を読むまでは)

わたしの弟・岸田良太には、生まれつき知的障害がある。ダウン症だ。(詳しくは「弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった」に書いた)

言葉がうまく伝わらない、発音もわかりづらい、みんなと同じことができない、いつもぼーっとしている。

でも、だめなところばかりじゃない。

玄関に靴を脱ぎ散らかし、母からいつも「あんたはムカデか」とお叱りを受けるわたしに比べ、よっぽど弟の方がきれい好きで、しっかりし

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ワクチンを打ったわたし、心臓を止めない薬

ワクチンを打ったわたし、心臓を止めない薬

お下がりの洗濯機をいつ持っていけばいいかという連絡を母にしたら、いま病院のレントゲン検査にきているとのことだった。

心臓に人工弁を入れている母は、“念のため”の検査がやたらと多い。いつも飄々とした外科医の先生が「うん、今日も異常なっしーん」と壁に貼りつけた検査の書類を見ながら、もう当り前に決まってたことかのごとく言ってくれるのだが、超弩級な心配性の母は、いつもあれこれと質問をする。

その質問が

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