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岸田奈美|NamiKishida
年末のある日とつぜん、部屋の天井が落ちて、上階の汚水が流れこんできたときの限界記録。
比較的多くの方の目に触れてしまったnoteを集めました。
母が心内膜炎で入院、祖母は認知症が悪化、犬は大暴れで……岸田家の危機に、祖父の葬儀、鳩の襲来などが続々と!「もうあかんわ」と嘆きながら毎日更新した2ヶ月の記録。ライツ社から発刊した同名の書籍に収録していないエピソードも。(イラスト:水縞アヤさん)
NHK BSプレミアムドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」の原作エッセイ・撮影現場レポートのまとめ。ドラマは“岸本七実”が主人公のトゥル〜アナザ〜スト〜リ〜なので、読んでから観ても楽しめること大請け合い!
わたしの“火事場の馬鹿力”ならぬ“焼け跡の馬鹿力”の活動限界値は、2週間ではないかということを、以前書いたことがある。 どんなに大変な状況でも、2週間だけなら、苦しさや悲しさをそっちのけにして、がんばれる。2週間を過ぎると、ガクッと落ちるのだ。 何気なく見ていた天気予報に目がとまった。 天気予報にも“2週間天気”というのがある。 2週間後の天気は、晴れるらしいぞい。 活動限界値を超えた先で、晴れた冬の空の下で、自分がどんな風にやっていけてるのか想像できない。遠すぎる
「さっき先生が回診にきはって……傷の治りが思ったより遅いから、年内の退院も無理やて……」 母、除夜の鐘リミットを待たずして、退院失敗。人生で初めての、家族そろわぬ年越しが幕を開けることとなった。黒豆の炊き方も教わってないのに。 悔しさたっぷりの声を聞きながら、ろくに母を励ませなかった。 「あー……」 あと2週間、いやあと3日、ちょっとぐらい伸びたって構わない、だってどうせ大晦日には帰れるのだからと目指して、治療をがんばっていた母である。パッと思いつく言葉で励ましたとこ
あなたの“あかん”は、どこから? わたしは、2週間から! なんかなあ、と思いはじめたのは、母の入院から1週間すぎた頃だった。 母は総胆管結石の手術が終わって、あともう1週間もすれば帰ってこられるだろうということで、わたしが実家の番をしていた。 パソコンと減らず口さえありゃどこでもできる仕事で、よかった。 犬の梅吉の世話と、隔週の土日にはグループホームから弟が帰ってくる。 梅吉は留守番ができず、散歩も吠えまくって苦手なので、わたしたちは家にずっといた。広いお庭で走り
『いたいよー』 入院している母からのLINEだ。 早朝、朝、昼、晩、深夜。時報のように送られてくる。 『いたい、なんもできない、つらいー』 開腹手術を受けて、一週間。まだ傷がじくじく痛むという。 『わたしがいま一番やりたいこと、わかる?』 『わからん』 『寝返り』 ごろんごろんもできず、車いすにも乗れず、ひたすら腹の痛みを耐える母。 『起きるのもしんどい、ごはんも見たくない。ずっといたい。ちょっとでも気を抜いたら病む』 病んでるから入院しとるんやで。お見舞
ある人から、二年ぶりに連絡があった。 わたしに頼みがあるという。 彼とは、六人ぐらいでご飯を食べたときに知り合って、すこし話しただけだった。つらい自分のことよりも、つらい時に助けてくれた人たちのことを、本当に嬉しそうに紹介する人だった。 つないだビデオ通話で、彼は言った。
退院してきたばかりの母が、また入院することになった。 一度目の手術で取りきれなかった結石を、どうにかこうにかしにいくという。 お腹をかっさばく手術だというので「縦やろか……横やろか……」と、切り口をやたらと気にしていた。さすがベテラン患者ともなると、肝の置きどころが違う。 術後の絶食がとにかくつらいと言うので、送り出す前日に、かたっぱしから母の好物を買ってきた。 別の用があって百貨店でそろえたので、だいぶ値が張っている。巨峰など、思わずレジから目を背けたほどであった。