岸田奈美|NamiKishida

100文字で済むことを2000文字で書きます。noteをまとめた本『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった(小学館)』『もうあかんわ日記(ライツ社)』『傘のさし方がわからない(小学館)』『飽きっぽいから、愛っぽい(講談社)』|コルク所属の作家

岸田奈美|NamiKishida

100文字で済むことを2000文字で書きます。noteをまとめた本『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった(小学館)』『もうあかんわ日記(ライツ社)』『傘のさし方がわからない(小学館)』『飽きっぽいから、愛っぽい(講談社)』|コルク所属の作家

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    • 岸田奈美のキナリ★マガジン

      新作が月4本以上+過去作200本以上が読み放題。岸田家の収入の9割を占める、生きてゆくためのマガジンです。おもしろいものを書くためにがんばります。購読してくださった皆さんは遠い親戚のような存在です!いつもありがとう!

    • ★★よく読まれる岸田奈美の記事★★

      比較的多くの方の目に触れてしまったnoteを集めました。

    • 飽きっぽいから、愛っぽい〜記憶と場所を巡る連載〜

      講談社『小説現代』で連載していたエッセイがnoteでも全文読めます。地元の神戸市北区、修行の北海道小樽、一人暮らしの東京……記憶と場所を紐づけてなにかを取り戻していきたい。(イラストは中村隆さん)

    • もうあかんわ日記〜2ヶ月間の限界家族〜

      母が心内膜炎で入院、祖母は認知症が悪化、犬は大暴れで……岸田家の危機に、祖父の葬儀、鳩の襲来などが続々と!「もうあかんわ」と嘆きながら毎日更新した2ヶ月の記録。ライツ社から発刊した同名の書籍に収録していないエピソードも。(イラスト:水縞アヤさん)

    • 姉のはなむけ日記〜ダウン症の弟のグループホーム入居騒動〜

      ダウン症の弟が自立のため、グループホームへ入居することになっただけのはずが、別府まで車を買いに行ったり、看板をあわてて立てたり、家族で泣いたりした日々のこと。

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    トリック・オア・精力剤

    つい2時間前のこと。 終電で実家に帰ったら、母がベッドで海老になっていた。背中を丸め、耳をすませば「ウウゥ」と、うめき声も聞こえる。哀しい海老である。 「胃が……

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    運転免許の一発試験に心が折れた日、八潮橋には馬がいて

    自動車教習所を、二度も卒業したことがある。 入学費用も二度払った。 それなのにわたしは、運転免許を持っていない。一応、運転技術と知識だけは有しているので「ブラッ…

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    酔っぱらい先生とわたし〜人生を変えた英語教室〜 「2.本気で学ぶときは、本気で教えるとき」

    院長に急かされ、わたしは居酒屋で1時間かけて、関西学院大学の過去問を解いた。三年前に出題された英語の問題だ。 解いたというより、必死のパッチでなんとか解答を埋め…

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    近況おたずね雑談『どないしてますのん?』(病理医ヤンデル先生と岸田奈美)

    タイムラインにいつでもいつもいるあの人が、いなくなっちゃうのってさみしい。 岸田奈美が最近あんまり話せてないあの人に「どないしてますのん?」と、近況をおたずねす…

    歯医者の付添いの味

    弟を歯医者に連れていくこととなった。 ハミガキ無精がたたって小さな虫歯を作っては埋め、作っては埋めしている万年工事中の姉とはちがい、弟はハミガキでもうがいでも、…

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    酔っぱらい先生とわたし〜人生を変えた英語教室〜 「1.ケンカと勉強は居酒屋で」

    「いまからユニバに連れてったるから、用意せえ!」 生意気が炸裂している中学二年生の春、父がわたしに言った。 な、な、な、なんやて! 青春の万年床と化したソファか…

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    トリック・オア・精力剤

    トリック・オア・精力剤

    つい2時間前のこと。

    終電で実家に帰ったら、母がベッドで海老になっていた。背中を丸め、耳をすませば「ウウゥ」と、うめき声も聞こえる。哀しい海老である。

    「胃が……胃が痛いよォ……」

    昨年、我が家を壊滅させたウイルス性胃炎を思い出し、わたしは飛び退いた。シュバッ。

    「ちゃうちゃう。昔から、季節の変わり目に毎年なるやつやねん……」

    竹馬の友ならぬ、竹馬の胃痛。母の経験では、胃腸薬を飲んで半日

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    運転免許の一発試験に心が折れた日、八潮橋には馬がいて

    運転免許の一発試験に心が折れた日、八潮橋には馬がいて

    自動車教習所を、二度も卒業したことがある。

    入学費用も二度払った。

    それなのにわたしは、運転免許を持っていない。一応、運転技術と知識だけは有しているので「ブラックジャックみたいなもんだし」と強がっている。

    もう二年も前のことになるが、聞かれるたびに説明が面倒なので、いきさつをまとめておく。これがわたしの運転のすべてだ。

    一度目の教習所通いは、大学入学前の春休みだった。運転の実習よりも、待合

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    酔っぱらい先生とわたし〜人生を変えた英語教室〜 「2.本気で学ぶときは、本気で教えるとき」

    酔っぱらい先生とわたし〜人生を変えた英語教室〜 「2.本気で学ぶときは、本気で教えるとき」

    院長に急かされ、わたしは居酒屋で1時間かけて、関西学院大学の過去問を解いた。三年前に出題された英語の問題だ。

    解いたというより、必死のパッチでなんとか解答を埋めただけだ。長文なんて、最初から最後まで、一体何について書いてるのか、まったくわからん。

    わたしが頭を抱えて格闘している間も、院長はひたすらビールを飲み、母は気の毒そうな表情で、〆の釜飯を茶碗にペコンペコンとよそっていた。

    「解けたか。

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    近況おたずね雑談『どないしてますのん?』(病理医ヤンデル先生と岸田奈美)

    近況おたずね雑談『どないしてますのん?』(病理医ヤンデル先生と岸田奈美)

    タイムラインにいつでもいつもいるあの人が、いなくなっちゃうのってさみしい。

    岸田奈美が最近あんまり話せてないあの人に「どないしてますのん?」と、近況をおたずねする勢いで雑談をしかけるTwitter Space配信。

    配信の音声も、全部聴けます。

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    雑談のお相手は、病理医ヤンデル先生。

    本当にやばいとき、冷や汗

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    歯医者の付添いの味

    歯医者の付添いの味

    弟を歯医者に連れていくこととなった。

    ハミガキ無精がたたって小さな虫歯を作っては埋め、作っては埋めしている万年工事中の姉とはちがい、弟はハミガキでもうがいでも、たっぷり時間をかけてやる。

    だから歯が痛いということはないのだが、夕食の席で母がふと、

    「良太……歯、ちっちゃなってない?」

    と箸を止めて言った。

    もともと小粒な歯をそろえている弟は、茶碗の白米を飲むようにペロンチョしていた。

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    酔っぱらい先生とわたし〜人生を変えた英語教室〜 「1.ケンカと勉強は居酒屋で」

    酔っぱらい先生とわたし〜人生を変えた英語教室〜 「1.ケンカと勉強は居酒屋で」

    「いまからユニバに連れてったるから、用意せえ!」

    生意気が炸裂している中学二年生の春、父がわたしに言った。

    な、な、な、なんやて!

    青春の万年床と化したソファから飛び起きて。ケータイで作った『ホムペ』の一言に自慢を書き込んで。嬉々として車に乗り込んだら。

    連れて行かれたのは、関西学院大学のキャンパスだった。

    「どうや、このスパニッシュ・ミッション・スタイル建築!」

    「ユニバは?」

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