新作を月4本+過去作400本以上が読み放題。岸田家の収入の9割を占める、生きてゆくための恥さらしマガジン。購読してくださる皆さんは遠い親戚のような存在なのです!いつもありがとう!
岸田奈美|NamiKishida
年末のある日とつぜん、部屋の天井が落ちて、上階の汚水が流れこんできたときの限界記録。
比較的多くの方の目に触れてしまったnoteを集めました。
母が心内膜炎で入院、祖母は認知症が悪化、犬は大暴れで……岸田家の危機に、祖父の葬儀、鳩の襲来などが続々と!「もうあかんわ」と嘆きながら毎日更新した2ヶ月の記録。ライツ社から発刊した同名の書籍に収録していないエピソードも。(イラスト:水縞アヤさん)
NHK BSプレミアムドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」の原作エッセイ・撮影現場レポートのまとめ。ドラマは“岸本七実”が主人公のトゥル〜アナザ〜スト〜リ〜なので、読んでから観ても楽しめること大請け合い!
たとえば、さ。 500人くらいが視聴してる鬼デカオンラインイベントで、1時間くらい前から配信スタッフさんたちが出入りして、テーブルの上には丁寧にラベルまで引っ剥がしたい・ろ・は・すとカントリーマアムも紙皿に鎮座してて、準備万端で「じゃあ今から本番でーす!」って言われたときとか。 クライアントから巨万の富をもらえるか否かのプレゼンで、ズラッと名実ともにエライ人たちが並んだ会議室に入り、白目剥きながら一晩かけて作ったプレゼン資料を「じゃあ今からご提案の方を始めさせていただきた
「どうしてスマホの画面が割れてても、平気なの?」 カウンターで、隣の席に座っていた男が言った。 カウンターと言えば寿司屋だ。そうここは寿司屋。わたしのような貧乏性の貧乏人には、たとえウニを殻ごと飲み込む芸を見せようが、入れてもらえない寿司屋なのだ。 GOの三浦さんが主催する食事会に急きょ欠員が出たらしく、浅ましく「エッヘッヘッ、寿司食わせてくださいよォ、回らない寿司ィ」と揉み手で頼んだところ、連れてきてもらえた寿司屋なのだ。 いつもわたしが回転寿司で食べる、ハンバーグ
わたしの弟・岸田良太には、生まれつき知的障害がある。ダウン症だ。(詳しくは「弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった」に書いた) 言葉がうまく伝わらない、発音もわかりづらい、みんなと同じことができない、いつもぼーっとしている。 でも、だめなところばかりじゃない。 玄関に靴を脱ぎ散らかし、母からいつも「あんたはムカデか」とお叱りを受けるわたしに比べ、よっぽど弟の方がきれい好きで、しっかりしてる。 難しい言葉はわからんが「ありがとう」「こんにちは」だけはハッキリ言える
わたしは、家からわりと離れたコインランドリーに、よく行く。 家にはPanasonic製のええドラム式洗濯機があるのに。すぐ近くに他のコインランドリーが何軒もあるのに。 その理由は、ただひとつ。 カウンターにノートが置かれているから。 なんてことはない、Campusの大学ノートと、サラサのボールペン。表紙には無愛想な太い字で「お客さまノート」と書かれている。 このノートを何気なくペラッとめくったとき、そこに広がる「コインランドリーの住民たちの世界」にグイグイ引き込まれた
9月23日に、わたしの1年間のムニャムニャが詰まった本「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」を出版することになった。 トレンディーな時代に生きた遠縁の親戚から「あんた本が出るんだってねえ、なんだっけ、ほら、“愛していると言ってくれ”みたいなやつ、予約するからねぇ」と連絡をもらった。 わたしの人生のどこに北川悦吏子イズムを感じたのかはわからんけども、そんなもんの予約を命じられた書店員さんは気の毒だと思う。 それで、本が出るとなったら、ものすんごくありがたい
※2020年9月「文藝春秋digital」に寄稿した、村上春樹著「一人称単数」の読書感想文です。いつもに増して、長いのです。 村上作品の感想を書くと、なぜか自分の話ばかりしてしまう文藝春秋さんから「一人称単数の書評をお願いします」と頼まれて、嬉々として引き受けた数分後に、わたしは唸りながら頭を抱えていた。 わたしは4月に刊行された「猫を棄てる 父親について語るとき」で、はじめて村上春樹作品を手にとった。わたしが彼の作品に長く手が伸びなかったのは、亡き父が熱烈なファンであっ