岸田奈美|NamiKishida
100文字で済むことを2000文字で書く。『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家…
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しげると、すすむと、折れない鶴(後編)
「行動援護従業者養成研修」という自閉スペクトラム症の方々をサポートする福祉の資格を取りにきたはずが。
ケアされるべき人がケアされないまま障害者をケアする仕事に就かねばならぬという構造上の地獄を見た話。
かなりしんどいので、せめてあったかい味噌汁の写真から始めたよ。
前編は↓から。
先生の指示にまったくついてこれず、紙も頭の中も真っ白になってしまったすすむ氏。何時間も黙って座りっぱなしだった
しげると、すすむと、折れない鶴(前編)
忘れかけていた、というより、忘れたかった記憶がフッと戻ってきた。
弟がまだ幼かったときのことだ。
「プールな、いくねん、プール!」
何時間でも水で遊ぶのが大好きな弟が、週末に出かけるという。
ガイドヘルプという福祉の制度をつかうと、ヘルパーさんが付き添ってくれるのだ。それなら弟につきっきりだった母も、家でゆっくり休める。
それはそれはもう大喜びの弟は、水着とタオルの入ったビニールバッグを
誰もが小さな“自閉”を持って生きてる
ダウン症の弟が、いっそう流暢にしゃべりはじめた。
半年前までは
「あー、ええ、おうですね、あい」
だったのが
「あーあ、また雨や。東京は雪やって。いやんなるわ」
になった。
26歳にして魅せる急激な成長に喜ぶ一方、逃げ出したオウムが知らん言葉を大量に覚えて戻ってきた時の怖さもある。
理由は言わずもがな、春からグループホームで暮らしはじめたからだ。
実家の和室をアジトに、悠々自適をか