新作を月4本+過去作400本以上が読み放題。岸田家の収入の9割を占める、生きてゆくための恥さらしマガジン。購読してくださる皆さんは遠い親戚のような存在なのです!いつもありがとう!
岸田奈美|NamiKishida
年末のある日とつぜん、部屋の天井が落ちて、上階の汚水が流れこんできたときの限界記録。
比較的多くの方の目に触れてしまったnoteを集めました。
母が心内膜炎で入院、祖母は認知症が悪化、犬は大暴れで……岸田家の危機に、祖父の葬儀、鳩の襲来などが続々と!「もうあかんわ」と嘆きながら毎日更新した2ヶ月の記録。ライツ社から発刊した同名の書籍に収録していないエピソードも。(イラスト:水縞アヤさん)
NHK BSプレミアムドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」の原作エッセイ・撮影現場レポートのまとめ。ドラマは“岸本七実”が主人公のトゥル〜アナザ〜スト〜リ〜なので、読んでから観ても楽しめること大請け合い!
グループホームに看板がついた。 なかの工芸のお父さんと妹さんが、車で運んで、スコップかなんかで地面を掘り、トンカチかなんかでトンテンカンテンし、つけてくれたのだ。 ちょうどその時間に仕事があったので、入れ違いになってしまったが、さっそく見に行った。 みょーん。 母が運転する車に乗り、近づいていたときから薄々わかっていたが、存在感がすごかった。 大きい。野球場の外野席にそびえ立っている看板ぐらい大きいとさえ思えてくる。東京ドームの日産の看板にホームランボールを当てて、
弟の電話は毎晩、続いていた。 「あのな、あのな、あのーな!」 からはじまり、興奮しているようなのだが、発音がはっきりしていないのでなにを言ってるのかがいまいちわからない。 「なんたらがもう、あかーんって、やねん!こらっ、やねん!」 なんのこっちゃわからないのだが、あかんことだけはわかる。岸田家はそれぞれ軽率にその三文字だけを口に出しがち。 中谷のとっつぁんに聞いたところ、同居人が四人ともそろったことで、お互いに緊張したり、行動を探ったり、いろいろあるそうだ。 「み
キナリ☆マガジン購読者限定で、「小説現代9月号」に掲載している連載エッセイ全文をnoteでも公開します。 表紙イラストは中村隆さんの書き下ろし、今回が最終回です。 わたしはなんのために、エッセイを書いてるんだろう。 二ヵ月前、ちょうど暑くなってきたころから、途中で力尽きるように、書くのをやめてしまう原稿がどっと増えた。下手になったなあ、と落ち込んでしまう日もある。 最近、気づいたことがある。 いや、本当はずっと前から気づいていたけど、気づかないふりをしていたことが。
母とわたしと弟と、そろって晩ごはんを食べた。 そのあと弟は、お風呂に入った。シャワーの音に負けないぐらい盛大な鼻歌を聞きながら、わたしは寝室でパソコンに向かっていた。 「奈美ちゃん」と、母がリビングから小さな声で呼ぶ。行ってみると、ソファの前に、弟の青いボストンバッグがあった。中身がちゃんと詰まっている。 車いすに座る母の膝の上には、母が選び、ていねいにたたんだばかりの弟の服が、行き場を失って積み重なっていた。 「自分で準備してたんやわ」 行き場を失った服の山を、ぽ
みんなの「もうあかんわ」な話を、岸田奈美が趣味で集めています。採用されたら図書券やステッカーをプレゼント! →なぜ集めているのか? →応募フォーム 今週のもうあかんわヘッダー文字職人 じゅんじゅん ぼくは、電車とドライブが大好きな12歳の男の子です。がんばって、書くのでたくさんの人に見てもらいたいです。 文字職人になっていただいたあと、お給料で、ご家族のみなさんにひとつずつお菓子をプレゼントされたそうで、お菓子の山に埋もれた本当に素敵な写真をお送りいただきました。
弟がグループホームへ本入居する、前日。 今までは二泊三日、三泊四日と、少しずつグループホームへ泊まる日を増やしていたけど、これからは平日の間、ずっと泊まることになる。 「泊まる」から「暮らす」へ、変わるのだ。 土日はこれまで通り、神戸の実家で母とわたしと弟と犬の梅吉がそろうので、そこまで大げさな旅立ちではないのだが。 どうしてだか焦って、今のうちしかできない(ような気がするが、実際はそんなこともない)ことを、片っぱしから探した。 弟と三宮の町へ繰り出し、やたらと忙し