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酔っぱらい先生とわたし〜人生を変えた英語教室〜 「4.土下座だけはできない」

勉強がまるで苦手だったわたしが、むちゃくちゃな先生に英語を教えてもらって、大学受験に挑戦する話。

目次

1.ケンカと勉強は居酒屋で
2.本気で学ぶときは、本気で教えるとき
3.青木くんと親しくする理由
4.土下座だけはできない
5.雪山を滑り落ちゆく受験生
最終話.合格発表の日

「マジでお前、殺すからな」

高校三年生、一学期の終業式の直後、剛速球ストレートの罵詈ばりをバリバリ投げてきた、このギャル。

「あんたも関学志望らしいなあ」

同じ志望校だった。

「せやで、がんばろな」

実際のわたしは震えていて、こんな風にはっきり言えんかった。せいぜい「がっ」と「ばっ」と「なっ」を細切れに漏らした程度で、発音としてはほぼガッバーナであった。

「死ね」


志望校とは殺しあいで奪うものである。一瞬、納得しかけた。わたしの知らないルールで受験と戦っている人もいるのだ。

ギャルはそのまま、わたしを踏み殺すかのごとくでっけえ足音を立て、仲間たちの元へ帰って行った。何人か、ギャルを励ますように肩を抱いていた。

とんでもない因縁をつけられたが、文句は言えない。わたしには、因縁をつけられるほどの因縁がある。

自業自得だと思った。

因縁は高校一年生まで、さかのぼる。

日が落ち、真っ暗になった運動部の部室に、わたしはいた。

泣きながら正座させられていた。

武士?

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週末にグループホームから帰ってくる弟や、ばあちゃんと美味しいものを食べます。中華料理が好きです。