酔っぱらい先生とわたし〜人生を変えた英語教室〜 「4.土下座だけはできない」
「マジでお前、殺すからな」
高校三年生、一学期の終業式の直後、剛速球ストレートの罵詈をバリバリ投げてきた、このギャル。
「あんたも関学志望らしいなあ」
同じ志望校だった。
「せやで、がんばろな」
実際のわたしは震えていて、こんな風にはっきり言えんかった。せいぜい「がっ」と「ばっ」と「なっ」を細切れに漏らした程度で、発音としてはほぼガッバーナであった。
「死ね」
志望校とは殺しあいで奪うものである。一瞬、納得しかけた。わたしの知らないルールで受験と戦っている人もいるのだ。
ギャルはそのまま、わたしを踏み殺すかのごとくでっけえ足音を立て、仲間たちの元へ帰って行った。何人か、ギャルを励ますように肩を抱いていた。
とんでもない因縁をつけられたが、文句は言えない。わたしには、因縁をつけられるほどの因縁がある。
自業自得だと思った。
因縁は高校一年生まで、さかのぼる。
日が落ち、真っ暗になった運動部の部室に、わたしはいた。
泣きながら正座させられていた。
武士?
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