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姉のはなむけ日記〜ダウン症の弟のグループホーム入居騒動〜

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ダウン症の弟が自立のため、グループホームへ入居することになっただけのはずが、別府まで車を買いに行ったり、看板をあわてて立てたり、家族で泣いたりした日々のこと。
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#日記

人生は山あり谷ありクロード・チアリ(姉のはなむけ日記/第1話)

人生には山もあれば、谷もあり。 坂もあれば、クロード・チアリ。 ヒガシマルのちょっとどん…

蜃気楼に浮かびし10畳の楽園(姉のはなむけ日記/第2話)

ダウン症の弟が入居できるグループホームの空きが、やっと一箇所出たかと思えば、塩対応という…

ただここで暮らしたいだけなのに(姉のはなむけ日記/第3話)

ようやくたどりついた、良さそうな気配のするグループホーム。弟もノリノリだったが、思わぬ落…

姉弟関係はいつもギリギリで森田一義アワー(姉のはなむけ日記/第4話)

その晩、実家から弟がわたしに電話をかけてきた。 「どうしてん」 「あのな、車、ないねん」…

いまから30分間、オペレーターを増やしてお待ちしてるわけでもないですが買います(姉…

弟の「グループホーム、行けるかな?」という心配げな声を聞き、テレフォンショッキングのノリ…

250万円握りしめたとて新車がない(姉のはなむけ日記/第6話)

新しいグループホームに弟を送り込む不安は消えねど、中谷のとっつぁんの思いに心を打たれ、注…

きみが家族じゃなかったらよかった(姉のはなむけ日記/第8話)

送迎車のためならエンヤコラと大分県別府市の車屋さんまで行ったら、なんと、ほぼ新車のセレナと出会えたのだった! 車屋の馬〆さんから、くわしい仕様や納期の説明を受けていると。 電話が鳴った。 グループホームの責任者、中谷のとっつぁんからだ。ちょうどよかった。セレナを入手できたって言おう。喜ぶぞォ。 「もしもし、お姉さんですか」 「はーい!ちょっと聞いてくださいよ、中谷さん。ありましたよ!車!セレナ!ほぼ新車!7人乗り!」 「えっ、はっ……ええ……!?」 興奮のあまり

ぐちゃぐちゃのお子様ランチ(姉のはなむけ日記/第9話)

近隣住民の人に、管理責任者である中谷のとっつぁんが早速、話を聞きに行ってくれた。 「車、…

ボケ続ける世界で生きてゆく(姉のはなむけ日記/第10話)

課題がポンポコと出てくる新しいグループホームに、弟を送り出してよいものか。 どんだけ悩ん…

看板バ バン バン バン ハァ〜ビバノンノ(姉のはなむけ日記/第11話)

とうとう、近隣住民の方とわたしが直接会うことはなかったが。 「鍵や扉はなくていいが、敷地…

最低限!刺激的ビフォーアフター(姉のはなむけ日記/第12話)

弟の体験入居の日が、目前まで迫っていた。 一ヶ月間、グループホームでためしに暮らしてみて…

細川たかしはここにいたい(姉のはなむけ日記/第13話)

弟の、グループホームでの体験宿泊がはじまった。月曜日から、二泊三日。 部屋に貼ってあるカ…

ギンギラギンの26歳男児(姉のはなむけ日記/第14話)

体験入居中のグループホームへ、もう行かないと宣言する弟。いままでの苦労が水のバブルになる…

夕暮れの大脱走(姉のはなむけ日記/第15話)

三週目のグループホーム体験入居が、はじまる。 週末、いったん実家へ帰ってきた弟が、ふらつきながら部屋を出てきた。足がもつれている。とはいえ、どう見てもわざとなので、もつれるというか、小粋なステップを踏んでいる。 「ちょっと、なんかぼく、しんどいねん」 「しんどいん?」 「ねつあるねん」 「マジか。体温計はかったるわ!」 「いいねん、いいねん」 弟は、小粋なステップでわたしの横をすり抜けていく。テレビ台の小さな引き出しから、薬の箱を取り出した。 「くすり、のむね