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君たちはどう濡れるか(漏水ビチョビチョ日記)

▼ これまでに書いた経緯

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(4日目)12月21日 9:00- わたしは客員教授

引っ越しで、身体はバッキバキ!

だが休む間もなく、精神はギンッギン!

なぜならば、今日は……大学で……講義……!

今年からわたしは、関西大学の客員教授に任命された。

そんな大役、岸田家先祖代々の歴史でも初めてだよ。地元に錦を飾るどころか、LEDも飾ってダンサー呼んでエレクトリカルパレード進行、待ったなし!

いざ、関西大学は人間健康学部へ!

実家で、鏡を見た。

連日の漏水さわぎで、顔つきが終わっている。なんていうか老けてる。あの部屋、龍宮城でしたっけ。まあ濡れてますもんね、ハハハ。

こんな……

こんな……人間らしくも健康でもないやつが……!
若者に……何を……諭せと……!

(4日目)12月21日 10:30- 講義のはじまり

教室には、たくさんの学生さんたちが集まっていた。

スクリーンに資料、投影する。

もう、これしか。

満身創痍のわたしが、いま一番、説得力を持って君たちに託せる講義ったらもう、これしか。

本当は色々あったんだよ。人生の幸福とか、言葉の綴り方とか。でも、なんか、なに言っても、虚空を舞うっていうか。

こんなやつから言われるのも、言うのも、ねえ。

地上波特大スペシャル版の武田鉄矢並みの情熱で、しゃべった。水漏れをドラッグのように憎んだ。なんならちょっと、泣いてた。

「なんなんだろな、この人は」

学生さんもそう思ったことでしょう。

わたしも途中から思ってた。

なんでこんなこと喋ってんだろなって。

(4日目)12月21日 11:00- 講義のダイジェスト

水漏れの渦中にいるわたしが、講義にて未来へ託したことを供養させてほしい。

1.おのれの目も耳も海馬も信じないこと
衣食住がひとつでも欠けると人間はバグる。怒り、泣き、はたと冷静になって振り向けば、歩いてきた道が焼け野原になってることに気づく哀しきゴジラだと思ったほうがいい。おのれを信じるな。

水漏れや濡れたものは、こまめに動画と写真を撮る。管理会社との電話は録音をする。iPhoneだとしゃべりながら通話ができないから、話し終わったら、内容をメモして、相手にメールをする。文章で残すこと。

2.淡々と動いてくれる親しい他人を召喚すること
冷静に動けるゴジラなどいないのである。ただでさえ、棲み家を失い、荒ぶっているゴジラである。そのくせ漏水すると、やることが金田一の事件簿の犯人より多いのである。ゴジラがそんな緻密なトリックを仕込めるわけないだろ。

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週末にグループホームから帰ってくる弟や、ばあちゃんと美味しいものを食べます。中華料理が好きです。