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岸田奈美のキナリ★マガジン

新作を月4本+過去作400本以上が読み放題。岸田家の収入の9割を占める、生きてゆくための恥さらしマガジン。購読してくださる皆さんは遠い親戚のような存在なのです!いつもありがとう!…
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運営しているクリエイター

#家族

遊園地特化型貧乏症

わたしの父は、遊園地が好きじゃなかった。 行列にも、騒音にも、絶叫にも、いちいち腹を立て…

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弟のパンチには信頼と実績の茶番

弟の良太は、優しい男である。 心がでっぷりしている。 ちょっとや、そっとじゃ、動じやしな…

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思いやりに気づくのはいつでも手遅れだ

わたしのエッセイをドラマにしてもらう時、NHKからディレクターさんや脚本家さんがやってきて…

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母ひとり黒豆を煮て夜を越す

二年ほど前から、母は煮てる。 なにかを、必死で、とにかく煮てる。 ガスコンロの前を陣取り…

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海ゆられ横顔にさす陽の光

海に入りたい。 沖で魚が見たい。 そういう衝動が、わたしにはある。 プールも、川もダメ。 …

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ハイスピード・タートルよ、永遠に

月曜の深夜、タイムラインに衝撃があらわれた。 カメがスケボーに乗っている動画だった。 だ…

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姉と弟の飲酒教習

その日、岸田家に爆風が吹き荒れた。 「良太さんが、お酒を飲んでしまいました」 なっ…… 「お昼休みにコーラを買いに行くとコンビニに出かけて、帰ってきたら、缶チューハイを一口飲んでしまっていて。本当に申し訳ありません!」 なんですってー! 連絡をくれたのは、ダウン症の弟が通っている福祉作業所の職員さんだった。 寝耳に水ならぬ寝耳にチューハイをダバダバと流し込まれた母は、それはもう、うろたえた。 弟は27歳なので法律的には大丈夫とはいえ、昼休みに飲酒ったらもう、世紀

「たまたき」

聞き慣れたばあちゃんの声の、聞き慣れない四文字が、スマートフォンのスピーカーから響いてい…

足りない年の瀬の泥人形

「さっき先生が回診にきはって……傷の治りが思ったより遅いから、年内の退院も無理やて……」…

病院送り・ダ・カーポ

母が総胆管結石で深夜に緊急入院した。なんやかんやあって、手術室に入ったのはお昼だった。 …

背負わない新聞の季節

「しんどひい」 月曜日、母から電話があった。 2週間前からお腹の痛みをうったえ、先週、病…

歯医者の付添いの味

弟を歯医者に連れていくこととなった。 ハミガキ無精がたたって小さな虫歯を作っては埋め、作…

車を使わずにドライブスルーしはじめた時、母は希望を掴む

このnoteは、ひとつ前に書いたnote↓の後編です。 十五年前、母が長期入院をしていた話の続き…

姉のはなむけ(姉のはなむけ日記/最終話)

季節が変わった。 朝、目が冷めた瞬間、汗ばんでいないことに気づいた。あんまり暑くない。これはもしや雨じゃないか。ゾッとしたが、ベランダからは明るい光が差し込んでいた。 秋が先っちょだけやってきたのだ。ことの始まりは春だったのに、なんという信じられない早さ。 ついにこの日がやってきた。 送迎車の納車だ! グループホームに送迎車がなくて弟が入居できない、というシンプルなお題であったはずが、なぜか看板を作り、電話口で泣き、警察を呼ばれ、脱走劇を繰り広げることになるとは。