みんなのお金で、3月21日にでっかい新聞広告を出したかったわけ
最後まで読むと、なんと読者プレゼントなるものがあります。あと本屋さんに勤めている人にもお願いしたいことがあります。
3月13日追記)広告の掲載エリアは、東京版(埼玉・神奈川・千葉の一部を含む)を予定しています!見れない地域の方が多いので、見れた方はぜひ、写真などUPしてくださると嬉しいです!
人生で一度は、札束の風呂に肩までつかりたいとまでは言わずとも、お金の使いみちに悩んでみたい。
みりんと、みりん風調味料の値段を見比べて、いつも後者を手にとってしまうわたしは、常々そう思っていた。
そのわたしが、まさにいま、お金の使いみちに悩んでいる。
こんな日が来るとは思わなかった。
なんのお金かというと「全財産を使って外車買ったら、えらいことになった」というnoteを書いたら、読者さんたちから集まったサポートだ。
(※母の入院にともなってガッと増えたサポートは、もちろん母の療養生活と祖母と弟のために全額使わせてもらいます)
全財産を使ってボルボを買ったら、1700人からお金をもらってしまった。事態を飲み込むのに時間がかかって、感激したのち、困惑した。
どうにかすぐお礼を伝えたくて「1700人へ一気にメッセージを送る方法はないか」とnoteの運営さんにたずねたら、同じく困惑気味で「そんな件数ははじめてで、あの、ごめんなさい、まだありません」と謝られ、ひたすら手作業でポチポチとメッセージを返させてもらった。そりゃそうだ。
ボルボは、自分で買うと心に決めていた。
だからそのお金は、ボルボに乗って家族で楽しむために使わせてもらうことにした。
具体的には、まず淡路島へ行き、海を見て、おいしいものを食べた。
まだお金があるので、本籍のある島根県にでも岸田家のルーツを探りに行こうかと思っていた、矢先。
母がやべえ心臓病の手術で入院した。
奇跡的に手術で一命はとりとめたけど、胸をカッ開いたので、体力と筋力の急低下が、スーパー玉出のセール並みにえげつないらしく。
ボルボを運転できるようになるには、2ヶ月くらいかかるらしい。
遠出するには、たぶんもっと。
病室から「ボルボがわたしの顔を忘れたらどうしよう」とめそめそ泣いて電話がかかってきたけど、どうするもなにも、一旦落ちついてほしい。
ボルボに乗って家族で楽しむ目処が立たなくなってしまった。
一年先になろうとも、二年先になろうとも、このお金はとっておいたらええやん。当面の生活費にあてたらええやん。
そういう考えもあるかもしれない。でもわたしはキナリ★マガジンの読者さんたちもいるおかげで、食べて寝るには困っていない。
なにより岸田家の場合、予想外に入ってきたお金を手元に長く置いて、良かったためしがない。
いつか使おうと思ってとっておくと、なにかトラブルが起きて、すぐさま予想外の出費でほぼ全額が蜃気楼のごとく消えてゆく。思い出せるだけで5回はある。狐にでもつままれてんのか。
っていうか、サポートしてくれた読者さんも、考えてもみてよ。
「岸田家の夢を叶えて、楽しませたがってるお金たち」なんだよ、それは!それらを!散歩もさせず!銀行口座のなかで!じっとさせてたら!どっか逃げたくもなるでしょう!ならんか!
そういう、狐につままれたような妄想にとりつかれていたとき。
ちょうどいい偶然がいくつかやってきた。
その1.世界ダウン症の日に向けて、朝日新聞で取材してもらえることになった
「世界ダウン症の日」という、国連で制定された記念日が3月21日だ。
わたしの弟もそうだけど、ダウン症は生まれつき21番目の染色体が3本あることで起こるので、3月21日らしい。
わたしより1本多いので、たぶん、弟は1本分のやんごとなき使命を持って生まれてきたのだと思う。ちょっと、喋るのとか、苦手だけど。
長い長い時間をかけて、弟の“とくべつ”は“あたりまえ”になったけど、まだまだ“あたりまえ”じゃない人たちもいる。
家族がダウン症だと周りに言えなくて悩んでいる、という連絡もずいぶんたくさんもらった。よくわかる。わたしだって中学生のとき、それがひずみになって彼氏と別れた。
愛ゆえに、胸を張って言えないこともある。
それはひとえに“みんなが知らない”からだ。障害の名前だけじゃない。ダウン症の人の表情を、言葉にならない気持ちを、ゆっくりと繰り返して前に進む暮らしを、身近に知らないから。
だからわたしは、エッセイを書いて、本にして、弟のおもしろい話を伝えることで、知ってもらいたいんだと思う。
ダウン症の日に向けて、弟について知ってもらう機会を、朝日新聞デジタル「アピタル」さんからいただけるということで、ありがたくお受けすることにした。
その2.橋口幸生さんと岩下智さんが、ポスターを作ってくれた
ところで、なにも言わずにこれを見てほしい。
藪から棒に、もう最高である。
良すぎる文章を書いてくれたのはコピーライターの橋口幸生さん、並べると家族が四人そろうナイスなデザインをしてくれたのはアートディレクターの岩下智さんだ。
しかも、最初、仕事として作ってくれたわけではない。
なんか「岸田さんの本がすんごいよくて、なんか、作っちゃいました」と、この状態でいきなり持ってきてくれた。
写真は、おなじみ、幡野広志さんに今まで撮影してもらった写真だ。
ポスターは、作るのにも貼るのにも、わたしの預かり知らぬところでお金がかかる。せっかく作ってくれたのに、いい仕事にならなかったらどうしようと焦っていたら。
「いや、もちろんなにかで仕事として使ってもらえたら嬉しいけど、それよりなんか普通に僕ら、作りたくて作っちゃったから、気にしないでください」
ケロッとして、言ってくれた。
このまま宝物として飾ってもいいけど、せっかくだから、見せびらかしたい。
その時、ふと思った。
これ、自分でお金を払って、どっかに貼ろう。
たくさんの人に見てもらいたい。
まだわたしのことも、弟のことも、知らない人に。
もらったサポートのお金で足りる、できるだけ目立つ場所へ。
あっ、そうだ。
3月21日の世界ダウン症の日、
朝日新聞さんに、でかい広告を出させてもらおう。(東京版)
弟の取材の記事も、読んでもらえるかもしれないし。
そう思った。
旅に使うお金を、広告になんて!と思うかもしんないけど、旅のお金はまた一年かければ貯まるし、なにより、自分で新聞に広告を出すなんて、読者さんのサポートがなけりゃできないことで。
この広告で、ダウン症について知ってくれる人が、増えるかもしれないわけで。
そうなると、どうなるか。
助かる人がいる。喜ぶ人がいる。
「うちの家族、ダウン症で」
「あっ、前に新聞で見たことあるわ!」
キョトンとされないことに、救われる人がいる。
なにより、目立ちたがりのうちの弟が、めいっぱい喜ぶ。たぶん新聞いっぱい持って、近所を周りまくるはずだ。
その3.っていうか、春の岸田家MVPは弟
ボルボの話から、なんかずっと、わたしと母にスポットライトが当たっちゃった気がしたんだけど。
母の入院から、いちばん頑張ってるのって、弟なんです。
母が退院したら使えるベッドを組み立ててくれたり。
もの忘れがひどいばあちゃんのスケジュールを、何度も教えてくれたり。
ご飯つくるのを、のっしのっしと手伝ってくれたり。
お腹がいたくて寝ているわたしのそばで、祈りを捧げてくれたり。
弟は言葉があんまりわかんないので、母がなんで入院してるのか、いつ帰ってくるのか、それもわかんなくて。
いつもと違う環境に彼が馴染むのは、わたしたちが思うよりずっと大変なことで。なんだろうな。たぶん、曜日の名前が全部変わるくらい大変。「ケチャ曜日」とか。
それでも弟は、家の中が暗く悲しくならないように、一生懸命マイペースでがんばってくれている。いつものように、生きる。それが弟なりのとんでもない努力であることを、わたしは知っている。
そんな弟が、春から家を出ることになった。
平日はグループホームで暮らしはじめるのだ。みんなよりも少し遅い、自立のときだ。立派なことだけど、ちょっとさみしい。
母もいない、ボルボも動かない、岸田家の日々を支えてくれた弟はまちがいなく優勝だ。
だから読者さんからもらったお金は、弟がよろこび、弟が生きやすくなり、ひいては、弟と同じダウン症の人たちにとってハッピーになるために使いたい。盛大に。
身の丈にあわないことを、一人で勝手に決めてすみませんが、3月21日に朝日新聞で広告を出させてもらうことになりました。(やむをえない紙面の事情で、延期になる場合もあります)
サポートしてくださった人は「この広告は、俺が出したってんぞ!」と、弟と一緒に、近所でちょっと、ほくそ笑んでほしい。
さて。
3月21日、広告を目にしたみなさんと、書店の関係者さんに、お願いしたいことがあります。
読者のみなさんへおねがい
すごくいい一枚です。
もしよかったら、写真を撮ったり、一枚だけ取って、親しい人に「これ、良太くんって言ってね」と紹介してください。
ダウン症について、Wikipediaでも、わたしの記事でも、エッセイでも、本でも、なんでもいいので、知ってもらうきっかけになってほしいのです。
お礼といってはなんですが、今回、橋口さんと岩下さんが作ってくれた「四枚そろえると家族の絵とコピーがそろうポストカード」をプレゼントします。
ポスター・ポストカードの印刷と配布は、小学館さんが全面的に協力してくださいました!ありがたい!
ほしい!と思った人は、4月10日(土)23時までに↓のメールフォームから送信してください。抽選で100名さまに届きます。
書店関係者のみなさんへ
新聞広告と同じデザインのポスターを、店頭で貼ってくださる書店さんを募集しています。
3月21日の世界ダウン症の日だけの掲示でも、かまいません。もちろん、しばらく置いてくださると、嬉しいですが。
貼ってくださる書店さんは、3月21日(日)23:00までに↓のメールフォームから送信してください。希望する書店さんに送ります。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!