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規則正しい揺れなら計算できる(もうあかんわ日記)

毎日21時更新の「もうあかんわ日記」です。もうあかんことばかり書いていくので、笑ってくれるだけで嬉しいです。日記は無料で読めて、キナリ★マガジン購読者の人は、おまけが読めます。書くことになった経緯はこちらで。

今日は、先月に引き続き、日本テレビ「スッキリ」にコメンテーター出演をした。見てくれた人、朝早いのにありがとうございます。

朝8時からの出演だけど、わたしが家を出るのは5時半。信頼のエムケイタクシーが、黒くてでっかいアルファードで迎えにきてくれる。

いつもきっかり25分に「到着しました」とドライバーさんから電話が入るのだけど、時間が時間なので、寝坊の防止も兼ねてんのかなあ。ヘアメイクはあっちでやってくれるし、朝ごはんもお弁当が出るので、着の身着のままなら5分でたぶんいける。絶妙な最終防衛ラインだ。

アルファードの中は黒色の革張りで、ひとつずつマッサージチェアみたいに区切られていて、リクライニングは背中と足と両方ある。ファーストクラスすぎる。

先月の初出演は、タクシーの中で緊張しっぱなしだったけど、今日はちょっとだけ余裕があったので、寝ようと思った。リクライニングをめいっぱいまで倒すと、ずるずると頭と背中がすべり落ちていって、なんか思てたんと違う感じになった。

いつか、ここでうまく寝れるようになりたい。

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日本テレビについたら、楽屋が和室だった。ぜんぶすごく新しいんだけど、和室と洋室があるんだね。

コルクのマネージャー(きしだの東京のおかあさん)の武田マッキーさんがすでに入って、待っててくれた。

出演者に配ってもらえる朝ごはんは、おにぎりがふたつと、だし巻き卵と、からあげと、きんぴらと、たくあん。おにぎりは世界一好きなツナマヨで、すごく嬉しかった。

「なんで和室があるんだろうねえ。和室の方がいいのかな」

「足が伸ばせるから?」

「ああー!寝れるから?」

「ああー!」

和室って不便なイメージがあったけど、長い時間待っているなら、ええこともあるかもしれない。大御所の芸人さんは和室で扇子持って、あいさつ待ってるイメージ。

ヘアメイク室に行くとき、今日は障害のある人の異彩を世に放つヘラルボニーのアートスカーフを持ってきているのを思い出した。工藤みどりさんの作品だ。

ヘアメイクさんに

「これ、なんかヘアアレンジとかに使えないですかね」

とお願いしたら「え?……ええっ、ええ〜?ちょ、えっと、やってみます」ってすごく戸惑わせてしまった。

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でも、こんないい感じでまとめてくれたので、プロってすごい。

ただ、実家で過ごした気絶しそうな日々のせいか、顔が信じられないほどむくんでいた。

「ちょっと失礼しますね」

メイクさんが、拳を突き出した。そのまま、甲の出っ張った部分を、わたしの頬から顎にかけて、押しつけていく。

ゴリゴリゴリッと、身体から鳴ってはいけない音がした。悲鳴をあげたのち、顔はちょっと縮んでいた。拳ひとつで解決する、プロってすごい。

ヘアメイクは二人体制。

一人が髪の毛をひたすらブローしていき、一人がメイクする。髪の毛を引っ張ってくるくるしていくから、もちろん顔は斜めになるし、揺れる。

その状態で、もう一人が、顔にいろんな液体を塗りたくっていく。揺れる顔面でアイシャドウやラインまで引いていくのを見て、ビビった。

名探偵コナンで、赤井秀一というFBI所属の天才スナイパーがいる。

片方がパンクして、ガッタガタのまま時速200kmで爆走している車の後部座席に乗り、後ろから追ってくる公安の車のタイヤを、正確に撃ち抜いていくという、ぶったまげたシーンがある。

彼はスコープを覗きながら、ドヤ顔で言う。

「規則正しい揺れなら……計算できるっ!」

今日のメイクさんはそれだった。完全に、髪の毛を引っ張りまくられるわたしの揺れを計算していた。いつでも何度でも言うけど、プロってすごい。

そして、あれよあれよという間に、別室へ移動して出演。

たぶん、でっかい失敗はしてないと思うんだけど、ちょっと調子が出なかった。話を振ってくださったみなさんに、申し訳ない。

ここ最近、あまり人の前で話さず、話題も介護かイオンのことばっかだったので、広い世の中のことに対する頭の回転力があきらかに落ちてた。でも、ここへ来て、ピンッとした緊張を持って、チームが起こす大きなエネルギーの渦に、飛び込ませてもらってよかった。

これで明日から、また、神戸でがんばれる。


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いまだ、言葉なんてものに頼っているわたしたちは


スッキリに出演したあと、新聞社さんの取材を受けた。

3月21日の世界ダウン症の日が近づいていることもあって、弟のことについて。2時間半の生放送に出演したあとだったので、疲れてはいたけど、逆に疲れていると、自分の奥底にあるストレートな言葉が出てきて、それはそれでいいな。いいこと言おうと、飾る手間が惜しいから。

「岸田さんにとって、ダウン症はどういう障害ですか?」

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新作を月4本+過去作300本以上が読み放題。岸田家の収入の9割を占める、生きてゆくための恥さらしマガジン。購読してくださる皆さんは遠い親戚…

週末にグループホームから帰ってくる弟や、ばあちゃんと美味しいものを食べます。中華料理が好きです。