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ひざログ3.5以上の店でしか飯が食えん

なんでか知らんけど、何十年も頭から消えへん記憶がある。

そいつらが海馬だか大脳皮質だかにずーっと居座ってるせいで、仕事に関する大切なことを、ぼろぼろ忘れていってるような気がする。


例えば。

こいつとか。

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ドナルドと……っ!バーバパパの親戚みたいな巨体と……っ!あと名前も知らんけどめちゃくちゃ見覚えのある青と緑!動力源が不明な気球!

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心配になるほどシンプルな構成のハンバーガーたちと、ファンタジー世界が舞台のゲームにだいたい出てきて重大なヒントを伝える長老的な役割の木!(伝え終わったら50%の確率で力尽きて穏やかに死ぬ)

見たことない人は、なにひとつ見たことないと思うけど。

見たことある人にとっては、マジで見たことがありすぎるやつ。

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平成初期のマクドナルドのベビーチェアーだ!

画像引用元:Droopyモミとみみの店長日記

親の顔くらい見た。これに座らせられてハッピーセット食った。あの頃のわたしは俄然、ハッピーだった。

フリマアプリで調べたら、中古でそこそこ売られてるので不思議。どういう経緯で手に入れるんだろう。家業のマクドを継いだとか?

とにもかくにも、このベビーチェアの絵ばかり覚えている。これを忘れられるのは、わたしが力尽きて穏やかに死ぬ時である。たぶん。

でもなあ。

このベビーチェア、大好きだったんだよなあ。


幼稚園から小学校低学年まで、毎週のようにマクドナルドへ行っていた。

ダイエーの中にあるマクドナルドが、当時、母とママ友たちの憩いの場であった。ドムドムバーガーもあったが、あっちは婆さんたちの憩いの場だったので、棲み分けされてたっぽい。今日一、どうでもいい情報。

でも、あの頃は、マクドナルドでもドムドムバーガーでもウェンディーズでもモスバーガーでもグレートモスでも、どこへでも行けた。

母が歩いていたので。


しかし今、母は。


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これこのような塩梅である。

これこのような塩梅で、車輪が二つついているので、どこへでも行けるビギナーステージは終わってしまった。

「うわっ!このへんに食べログ3.5の店、あるで!」

出先で運命的な出会いをしても、車いすで入れるかどうかを、まず調べんといかん。

2018年に前職の会社で調べたデータだと、東京都内で“車いすで入れるお店”は47%だった。半分の確率で、入れへん。

車いすでトイレにも入れるお店はさらに6%を切るので、尿意を催していたらほぼ終わりである。わたしの作品の中で尿意便意の話だけはしてたまるかと誓っていたが、その誓いもここで終わりである。

そういうわけで、まずは、入りたい店を見つけたら、食べログなら「外観」の写真をチェックする。Google mapなら「ストリートビュー」で。

母の重みは、精神的にはそこそこ重いが、物理的には車いすを入れても40kgを切るので、1段くらいの段差なら、なんとかなる。

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これこのように。
(友情出演:母の高校の同級生・船越くん、酒に強い)

問題は、その先。


ひざが、入るかどうか。


文字通りの意味ね。カックン入れられるかどうかじゃないからね。

店のテーブルに、母の膝が、つっかえないかどうか。食べログ点数3.5よりも、ひざろぐ点数3.5の方がよっぽど重要。

歩いている人が座るときより、母の方が、車輪の分だけちょっと高くなる。

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この写真の布の位置くらいまでテーブルがあると、つっかえる。


つっかえると、テーブルに手が届かんので「ねるねるねるね」の魔女状態になる。

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掘りごたつ席や、椅子が固定されてる席も、母は使えない。ちょっとでも歩けてたら、使えるけども。


「美味しいラーメンが食べたい!って思ったら、いつでも、どこでも、フラッと立ち寄ってみたい」

母がよく言う。

わたしなどはそれをやり続けて現在このざま(昨年比+12kg)だけど、母にとってはよほど特別な意味を持つ。

「ホームにある立ち食いのきしめんを、一度でいいからすすりたい」

新幹線で名古屋に止まるたび、うらめしそうに言っているので、その執念たるや。立ち食いは、立って食べるから、立ち食いやね。

ラーメン屋は、カウンター席が多い。

ひざは入っても、テーブルが高すぎる。


地元にある「神戸ちぇりー亭」も、カウンター席のラーメン屋だった。

仕事を終え、車で前を通るたび「ええなあ」「食べたいなあ」と思いながら、母は餃子の王将へ直行していた。

ある日。

母は年末だか年始だかの業務で、疲れ果てていた。

「ちらっと、見るだけ。見るだけやから」


ラーメン屋でウィンドウショッピングができると思い立つほどには疲れ果てていた。たぶん。背脂やらチャーシュやら見てどないすんねん。

同僚と一緒に、のれんをくぐり、店へ入る。

「あかんわ」


母と同僚は、すぐに悟った。予想どおり、高いカウンターに丸椅子が並んでいる。一本通路で狭い。

醤油と豚骨のにおいをかげたので、それをお土産にして帰ろうと思ったとき、店員さんが笑顔で言った。

「いらっしゃいませ!」

そして続ける。

「お手伝いしましょうか?」


びっくり。

その時、母の脳裏に浮かんだのは「この状態でも入れる保険があるんですか?」である。保険は入れても車いすは入れない。

「ありがとうございます。でも、この高さだと無理だと思うので……」

そそくさと扉に手をかける母を、店員さんが呼び止める。

「いや、せっかく来てくださったので、どうしたらいいか、一緒に考えさせてください!」

さらに、びっくり。

でも新鮮だった。一緒に考えさせてほしい。どんな店でも、断られるか、できることだけを告げられるので、かけられたことのない言葉だった。

こんなに爽やかすぎるノープランも、なかなかお目にかかれない。

「抱っこして、席に移るのは?」

「腹筋に力が入らないので、背もたれがないと落ちちゃうんです……」

「膝の上に、トレイごとラーメンを乗せたら?」

「両手が使えないから、こぼしちゃいそうで……」

いろいろ店員さんが知恵を絞ってくれるが、母は申し訳なさそうに事情を説明する。

「あっ!」

そのとき、店員さんが一旦、裏へ引っ込んだ。

「これならどうでしょ?」


その結果、母から送られてきた当時の写真がこれ。


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母が!ベビーチェアで!ラーメン!食ってる!


膝!いい感じに!入ってる!


Good mother knees in……!
(グッドモーニング的な発音で)


どれだけ輪廻を周回したら、オカンがベビーチェアで飯を食ってる場面を見られるだろうか。レアさに感動してしまった。額に飾りたい。宮廷画家に頼んで油絵にしてほしい。

マクドナルドのベビーチェアを思い出す。やっぱりベビーチェアは偉大なので、記憶に残っていてほしい。わたしの海馬と大脳新皮質に、ずっといてくれていいよ。一緒に暮らそう。庭で犬も飼おう。贅沢はさせてやれないかもだけど、俺、真面目に働くからさ。

その晩、夢を叶えた母はたいそう喜んで、眠りについたそうな。


〜第一部・完〜


段差があるかどうかよりも、膝が入るかどうか、が重要になって、何年も経つ。わたしのGoogle mapには「ひざ入る」という雑なリストがあるので、実質、これがひざログ。

バーカウンターも、背もたれがある椅子なら、母は座ることができる。

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Good mother knees in……!

(母の高校の同級生・船越くん、酒癖が悪い)


神戸のクルーズ船「コンチェルト」も。

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乗船するためには階段を登らなくちゃならないけど、屈強な船乗りたちが車いすをかついでくれるので。

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船内レストランのカウンター席さえ抑えることができたら

Good mother knees in……!



母がもっとも愛する沖縄そばの店が、八重岳にある「きしもと食堂」で。もともとここでは、カウンター席で母はちょっと無理をして食べていた。

それが、だな。

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Good mother knees in……!


何ごとかと思ったら、車いすのお客さんのために、わざわざ机を削って、膝が入りやすい席を作ったそうだ。優勝。

ついでのついでに。

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Good mother knees in……!


〜第二部・完〜


障害のある人と飯行くとき、どうやって店を選んだらええかわからん、と聞かれるので、おまけとして書いておきます。

前職で、えらい方々とたくさんご飯を食べさせてもろたけど、店選びでめちゃくちゃ失敗して血の気が引いていた時代のメモでございます。

超・我流と偏見(このテーマにあるまじき)なので、万が一にも炎上したくないからマガジン限定にしますけど、あしからず!

知識自体にそんな興味がないって人でも、課金してくれたら、わたしが母と美味いものを食べられます。やったぜ。

車いすに乗ってる人と飯を食う

1. 店の段差は0段〜1段まで
段差はないに越したことないけど、手でこぐ車いすなら、段差は1段くらいまでなら店員さんと協力し持ち上げて入ることができます。電気で動く車いすなら、重い(100kgとか)ので0段が無難です。Google mapのストリートビューや、食べログの外観写真で確認。食べログの絞り込み検索機能も使えるらしいね。店内に階段あるかも注意。春とか秋なら、店前のテラス席を使うという荒業も。

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