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思い、思われ、ふり、ふりかけ(もうあかんわ日記)

毎日21時更新の「もうあかんわ日記」です。もうあかんことばかり書いていくので、笑ってくれるだけで嬉しいです。日記は無料で読めて、キナリ★マガジン購読者の人は、おまけが読めます。書くことになった経緯はこちらで。

入院中の母から、電話があった。

「あのな、さっき車いすに乗ってリハビリ室行こうとしたらな」

「うん」

「みんな、大部屋の病室から出てきて、エレベーターホールをうろうろしながら電話とかzoomとかしてるねん」

「ほう」

「わたしは個室にしてもらえたから、いつでも誰かと電話できるやろ」

「せやな」

母はいま、ネットも電話もできる個室にいる。2ヶ月でかなりのお金がかかるけど、2月のマガジン購読とサポートのお金をここに充てさせてもらった。

「それで、冷蔵庫もあるから、冷たいジュースをいつでも飲めるやろ」

「せやな」

「こんなに幸せなことって、ないわ」

「……せやろか!?」


電話の向こうでズズッとすすり泣くのが聞こえた。

幸せの感覚がバグり倒しておる。

この人は、大動脈解離で歩けなくなったあと、10万人に数人しかかからない病気にもなり、死ぬかもしれない大手術を二度もして、2ヶ月もの間、感染対策で誰もお見舞いに来れない場所に入院している。

「ちょっとちょっと、あなた。かからなくていい病気にかかったんやで」

「あれえ?そういえばそうやな。でも幸せやなって思うねん」

母はキョトンとした。

人生の幸せっていうのは、人と比べるものではなく、自分の経験のなかで比べるものなのかもな。

母は「大動脈解離で目が覚めたら下半身麻痺になって、四人部屋で身動きとれずに入院した一年間」というドン底の経験があるので、それに比べたらいまはハッピーなんだろう。

やばくなってからのばあちゃんは、母のことをまだ子どもだと思ってしまってるので、やいやいうるさく言うてくるし。でも病院なら、静かに韓国ドラマばっかり観れるし。はじめての一人暮らしみたいなもんだ。

こうなると、トラブルとか挫折とか、不幸だなあっと思う瞬間って悪くないかもしんない。あとから幸せを感じるための貯金なので。


突然ですがここで、入院中の母が心からハッピーを感じられた合法的なブツをいくつかご紹介。入院するかもしんねえ人の、参考になれば。


エントリーNO.1 ふりかけ

入院が決まってまず最初に所望されたのは、せっけんでも、タオルでも、ストロー付きコップでもなく。

「ふりかけをおくれ」

だった。

病院食でいちばんの難所は、盛られた白飯だそうだ。

普段なら、生姜焼き、豚汁、たくあんなどがあれば、なんぼあっても困らん白飯。しかし病院のおかずは味が薄い。ごはんがススマン君になってしまうのだ。

食事制限がなく、手術で失った体力をエンヤコラしなければならん母は、残すと看護師さんから「あ〜!き〜し〜だ〜さ〜ん!の〜こ〜し〜て〜る〜!」と言われる。

母のいる心臓血管外科の病棟はほとんどが耳の遠いじいさんかばあさんで、看護師さんの振る舞いも老いナイズドされている。

母のもっぱらの敵は、極寒のエベレストのごとくそびえ立つ、白い米の山だ。米の山を無酸素で攻略する手段は、ひとつ。

味をつけること。

よって、母は「入院生活で役立つものはいろいろとあるけど、ふりかけは盲点。全人類はマイふりかけを持つべき」という狂信者になった。

でもこれ、入院したことがある人なら、わかってもらえると思うんだよね。

一応、病院内のコンビニでも「丸美屋ののりたま」「永谷園のおとなのふりかけ」が飛ぶように売れているけど、母いわく、飽きるらしい。たしかに。給食の味がする。

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そこで、このように、ちょっと豪華なふりかけを持っていったところ、めちゃくちゃに喜ばれた。

二ヶ月の入院生活で、五種類ほど用意したら、今日はどのふりかけで食べようかという楽しみが生まれたらしい。生活のハリというやつね。

アトレやイオンなどによく入っている、久世福商店で買ったふりかけが、徳に満足度が高かった。具がしっとりしていて食べごたえがあり、しらすやいかなどわりと豪華。

食事制限がある人もいるので、お見舞いに持っていく場合は、よく確認してね。

これ、ふりかけをカバンいっぱいに詰めて、病棟を回りながら売ったら、そこそこいい商売になるんじゃないかな。


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エントリーNo.2 変化球のお茶

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