「生まれてきてよかったのか」と問われたら
ダウン症の弟・良太が、いつのまにかiPadを使ってYoutubeを観るようになったとき、わたしは声が出るほど驚いた。
一体どうやってお目当ての動画を検索しているのだろうかと不思議になって、しばらく彼の様子を観察してみた。
まず、部屋から自分の好きなキャラクターのぬりえ本や、おもちゃのパッケージを引っ張り出す。そのタイトルに「ドラゴンボール」などと書いているのを見つけて、指でなぞって確認しながら、ポチポチと同じ文字をキーボードから見つけ、検索窓に打ちこんでいた。
フリック入力もよくわかっていなかったが、根気よくひとりで何度も試しているうちに、わかってきたらしい。わが弟ながら、たくましい。
誰にも教わっていないことを良太が執念で習得しているのを見ると、わたしはどんなサプライズよりも嬉しい。
わたしは良太と一緒に、テレビの大画面でYoutubeを観ていた。
ふたりとも好きなアニメの解説動画をいくつか観ていると、Youtubeがおすすめをランダムに表示させるスペースに、こんなサムネイルが並んでいた。
「赤ちゃんがダウン症だと判ったら、堕胎させます」
氷の手で心臓が一気に握りつぶされたような心地がした。
出生前に赤ちゃんに障害があるかどうかを診断できるとなってから、こうした話題が出ることはめずらしくない。人それぞれ、いろんな考え方があって当たり前だと思う。ある意味、慣れていたはずなのだが、良太のすぐそばで目の当たりにしたのは初めてだった。
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週末にグループホームから帰ってくる弟や、ばあちゃんと美味しいものを食べます。中華料理が好きです。