なにも読むな、だれにも聞くな、ぜんぶ忘れな(君たちはどう生きるか鑑賞記)
スタジオジブリ『君たちはどう生きるか』を観た。
これだけを伝えたくて書いてるようなもんだけど、
なんも読まんといて。
なんも聞かんといて。
楽しみたいならば、今すぐチケットを買って、映画館へお行きなすって。
ツイッターも映画.comも、開くんじゃない!
ネタバレがどうとかいう次元ではなく、映画にまつわる、どんな人のどんなささいな言葉も、なんぼの点数の星も、あなたの体験を汚してしまう。
子どものころに図書室で、だれにもなにも言われず、手にとった本がある。まっさらな心を掴んで引きずり込んで離さなかった、そんな本がある。
あるでしょうよ。
あれです。
あのときと同じ。
あなたは今、本棚の前に、ひとりで立ってる。
おもしろかったらとか、つまんなかったらとか、考えたらあかん。子どもを連れて行って楽しめるかも、どうでもいい。
楽しんでもいいじゃん。寝てもいいじゃん。
体験のほうがだいじ。何十年か先で、感想が変わるのも、あれなんだったんだろと笑うのも、人生のおいしい体験。
以上!解散!
わたしはもう、観たことをはやく、ぜんぶ忘れたい。
読まれなくていいし、読まれないほうがいいんだけど、忘れるためには書くしかないというダメなわたしなので、感想を書きます。
もう一度言うけど、なにを語ってもネタバレです。でもネタバレをくらっても物語のおもしろさは減らないと思います。
そのかわり、体験が永遠に消えます。
児童文学を読んでるときの自分を、映画で観せてもらったんだなと思う。
人生では、死をはらみ、毒を含む、人生を根こそぎにしていく風が吹くような現実を、味わうことがある。
愛する人はもういない。どこへも行けない。朝になっても変わらない。どうしていいかわからない。
そういう時に、ここじゃないどこかへ、連れ去ってくれたファンタジーが、わたしにもあった。
『天空の城ラピュタ』が、そうだった。
ヒヤッとして、ワッとなって、ボーッとして、どっぷり夢中になって、ラピュタが崩れ落ちるとき、終わらないでほしい、ずっとこの世界にいさせてほしいって願ってた。
終わったら、つらい現実が、つらいままでわたしの帰りを待っている。
それでも帰るのは、ドーラおばさんみたいな友だちをつくりたいから。狭いキッチンの大鍋で、スープを煮込んでみたいから。
あのシーンだけは、ずっと覚えてる。
その憧れだけでわたしは、生きてけると思った。
テーマとか、モチーフとか、設定とか、物語とか、わざわざ考えたこともない。どうでもいい。よくわかんないぐらいのほうが、心に居座る。
っていうか、本作『君たちはどう生きるか』は、中盤から展開が不思議すぎてわかんない。
でも、考えたらいけない。
アホみたいに楽しむだけでいい。
ファンタジーの世界に行って、帰ってくる。
そして大人になると、だいたい忘れる。
生きる力になった何かだけが、石ころみたいに残る。
人が覚えていられることの数には、限界があるから。
本当にだいじなことを失わないためには、考えず、忘れたほうがいい。
ファンタジーに没入したときの、だれも意識できない、どんな言葉にできない、そういう体験を丸ごと『君たちはどう生きるか』が写しとっている。
宮崎駿さんの、原体験なんだろうな。
本作を観ていると、過去のジブリ作品をフッと思い出すような一瞬が出てくる。オマージュとかサービスじゃなく、最初の最初っから全部、宮崎さんの頭の中にあった感覚なんだろうな。
吉野源三郎さんが書いた同名の本『君たちはどう生きるか』は、こう結ばれる。
宮崎さんは、こう生きた。
「この世は生きるに値するんだ」と語りかけるような、アニメーションを作ってきた。吉野さんへの答えが、本作だ。
だれのためでもない、自分のための、自分そのものといえる作品を、世に残せることは、どんだけ幸せなことだろうと想像する。
わたしも問われている。どう生きるのか。もしくは、絶望のなかで死ぬのか。
『君たちはどう生きるか』と、地球の続く限り、絶え間なく物語を変え、答え、問いかけ、継がれていく。
ここから先はシリメツレツだけど、わたしにガツンと効いた、こまか〜い感想。シーンやセリフなど、いわゆるガチのネタバレ。
セリフや歌詞は、うろ覚えなので、正しくないことがあります。
考えるだけ、語るだけ、野暮です。
どう生きるかなんて、考えられることでも、語れることでもないので。
はい。
思い出せない大切なことって、あるよねという話
これ、むちゃくちゃ言葉にしづらいけど、あるよね。わたしだけかな。ないのかな。いや、あるよね。あるって。
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