快楽物質がドバドバ出る料理と、絶望の相関
のらりくらりと、思いついたり、想像したりをごった煮した文章です。
ちょっと喋る練習してて、喋りながら書いたんで、うるさかったらすみません。
快楽物質がドバドバ出る料理
というのが、わたしにはある。みなさんにもあると思う。
藪からスティックな話だが、ちょっと教えてほしい。
この世に美味いものは数あれど、これだけは目にした瞬間、ゴクリと生唾を飲み込み、一心不乱に口の中へ詰め込み、「世界で一番幸せなのでは……?」以外の感情が消失してしまう料理を。
母の場合は「ゆず大根」で、弟の場合は「ビビンバ」だった。
ちなみに弟にとっての「ビビンバ」とは、長らく、たまにラッキーチャンスで行ける焼肉屋でしか出てこない、よそ行きの飯であった。
それをつい先日、母がOisixのキットを使って、フライパンでビビンバを作ったところ、彼の中で天変地異が起きるくらいの衝撃が起きたらしい。
はじめて火を目にした人類の祖先のごとく、はじめてビビンバを家で食った弟は「ビビンバ?今日、ビビンバ?」と楽しそうに何度も母へたずねるプログラムと化した。
わたしの場合は、丸亀製麺の「とろ玉うどん・並(冷)」だ。
セルフサービスでネギと天かすを山盛りにして、ごまを振り、つゆと麺の天地を返すようにして混ぜ、別注したちくわ天をかじりながら、かきこむ。
舌の両側がつゆの甘みで喜び、噛み切れなかったシコシコのうどんも山芋とろろのウォータースライダーに乗り、つるりと喉の奥へと落ちていく。
脳が快楽物質で満たされる。
やがて人は死に、草木は芽吹く。
ここから先は
岸田奈美のキナリ★マガジン
新作を月4本+過去作400本以上が読み放題。岸田家の収入の9割を占める、生きてゆくための恥さらしマガジン。購読してくださる皆さんは遠い親戚…
週末にグループホームから帰ってくる弟や、ばあちゃんと美味しいものを食べます。中華料理が好きです。