飽きっぽいから、愛っぽい|絶対に取れない貯金箱@小豆島の旅館にあるゲームコーナー
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飽きっぽいから、愛っぽい|絶対に取れない貯金箱@小豆島の旅館にあるゲームコーナー

岸田 奈美

キナリ☆マガジン購読者限定で、「小説現代4月号」に掲載している連載エッセイ全文をnoteでも公開します。

表紙イラストは中村隆さんの書き下ろしです。

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おこづかいをもらえる日といえば、ゲームセンターへ行くと決まっていた。六歳から十歳くらいの間まで、特に通いつめていたが、子どもだけで行ってはいけないと学校から決められていたので、いつも父方の祖母が連れて行ってくれた。

もう今は名前が変わってしまったそうだが、当時、阪神甲子園球場のすぐ前にダイエーというショッピングセンターがあり、そこに大きなゲームセンターが入っていた。

今でも目を閉じれば、入り口に掲げられたゴキゲンな新丸ゴを思い出せる。「らんらんらんど」だ。

「らんらんらんど」には、お子さまが想像するありとあらゆるゲームの筐体が用意されていたんじゃないかと思う。一人乗りのメリーゴーランドや観覧車まであった。それぞれが違う、それでいてどことなく似た電子音のメロディを奏でて、にぎやかに混ざり合うさまは、夢の国といっても差し支えない。

広大なゲームセンターの隣はフードコートになっていて、ゲームに熱中してお腹がすいたら「ドムドムハンバーガー」でキッズセットを注文すれば、朝から夕までずっといられた。

甲子園に住んでいる祖母が、荷台に新聞紙をぐるぐる巻いたボロの自転車にわたしを乗せて、「らんらんらんど」に到着する。すると、千円札を一枚、財布から出して「だいじに使うんやで」と言う。受け取った千円札を両替機に吸い込ませて、受け皿にじゃらじゃらと小銭が吐き出される瞬間、からだの温度がバーッと上がって、目がらんらんと輝いている気がした。

まさに「らんらんらんど」じゃないか。

小さな手で、二、三回にわけて小銭をガッと摑み、ポケットに入れると、わたしはもう無敵だった。

「さあ、今日はなにから手をつけてやろうか」

意気揚々とゲームを探すが、わたしが遊ぶのは大抵、景品がもらえるゲームだった。UFOキャッチャーや、動く台にお菓子を載せて穴に落とすゲームなどを好んだ。

これは大人になった今でもそうで、お金が当たる宝くじは買わないが、景品が当たるくじは喜んで買う。飲み物を買うために入ったコンビニで、アニメのフィギュアが当たるようなくじをたまに見つけると、反射的にやってしまう。大きなフィギュアが当たると、むき出しのまま箱を狭い部屋へ持ち帰りながら「どうしようね、これ」と嘆く。それほど好きでもないアニメだっていうのに、やめられない。

ここで発端を、従兄弟になすりつけようと思う。

わたしが「らんらんらんど」に入り浸っている間、一歳下の従兄弟は冷めた目でわたしを笑いながら「毎回千円をゲームに使うくらいなら、ゲーム機を自分で買って家でずっと遊ぶ」と言い、貯金していた。わたしよりもずっと堅実で、賢かった。難関私立中学校にさらっと入学できたのも頷ける。だが、わたしは悔しかった。

「ふんっ。あんたがほしそうな景品、わたしが取って泡吹かせたるわ」

従兄弟が好んでいたスーパーカーのミニカーなんかの景品に狙いを定め、血眼でUFOキャッチャーにつぎ込むなどした。

そんな愚かな調子なので、祖母からもらった軍資金の千円などすぐに飲まれてしまう。ものの十五分で手持ち無沙汰になってしまったわたしを、母はギャンギャン怒るが、祖母はため息をつきながら「今度こそだいじに使うんやで」と、わたしのポケットにこっそり千円札をもう一枚、ねじ込んでくれた。わたしはまた無敵の愚者になった。

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