見出し画像

MOTHER AND BROTHER

岸田奈美|NamiKishida

深夜の京都駅は慣れない大雪で、えらいことになっていた。

タクシー乗り場はズラーッと長蛇の列。全然動かない。

旅行中であろう外国人が両手をあげて「ヒィ〜!」って言ってた。蚊の鳴くような声は世界共通。

仕方ないから、行けるところまで地下鉄で行って、あとは歩いて帰ることにした。コンビニではカイロすら売り切れ。

あったかそうなものは、ピザまんだけ。

剝き身のピザまんの温もりをすすりながら、いざ死出の旅。

道は真っ白に埋まっていて、車も人もほとんど通ってない。ピザまんの灯は早々に途絶えた。せめて屋根の下へと商店街に入る。

ビュオーッと雪風が吹き込んでいて、屋根の下でもー3℃だった。

お店のシャッターの前に、開いた傘が置いてある。

だれかの傘が飛んできたんかな。ちがう。

傘を屋根にして、人が寝ていた。

この続きをみるには

この続き: 5,292文字 / 画像3枚
この記事が含まれているマガジンを購読する
このマガジンを購読すると、新作が月4本以上+過去作が200本以上読み放題になります。岸田家(母・弟・祖母・梅吉)が生活できるほか、知的障害グループホームや高齢者支援施設などにも使われます。

新作が月4本以上+過去作200本以上が読み放題。岸田家の収入の9割を占める、生きてゆくためのマガジンです。おもしろいものを書くためにがんば…

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
岸田奈美|NamiKishida

弟が暮らす知的障害グループホームの運営や差し入れのお金に使わせてもらったあと、退院した母と行きたい場所に行くための旅費にします。春にニューヨークへ行きたい。