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家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった

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NHK BSプレミアムドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」の原作エッセイ・撮影現場レポートのまとめ。ドラマは“岸本七実”が主人公のトゥル〜アナザ〜スト〜リ…
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#坂井真紀

絶対に、だいじょうぶの巻(ドラマ見学最終日)

絶対に、だいじょうぶの巻(ドラマ見学最終日)

「だいじょうぶ」って言葉は、不思議だ。

大好物のウインナーが品切れだったときに弟がボソッとこぼす「だいじょうぶ、だいじょうぶ」は、「しゃあない」っていう意味で。

三者面談でさんざんな通知表を見せながら先生が放った「だいじょうぶでしょう」は、「どこでもええから進路をはよ書け」っていう意味で。

この世に生まれるありとあらゆる「だいじょうぶ」は、言った人にしか、言われた人にしか、訳せない。

そし

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耕助パパと愛しのボルちゃんの巻(ドラマ見学6日目)

耕助パパと愛しのボルちゃんの巻(ドラマ見学6日目)

とても、かなり、すごく、忘れっぽい。
わたしというやつは。

小学生のときは、忘れ物をしない日のほうがめずらしかったのではないか。絵筆やトイレットペーパーの芯やらをボンボン忘れ、図工の怖くて嫌味なオバチャン先生にいつも怒られ、泣いていた。

「絵筆持ってへんような子は、なにしに学校来たんかしらね。あー、なるほど、先生がバカやから見えへんだけやね。バカには見えへん筆ってね。ほな、続けましょ」

こっ

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大いなる愉快な第一歩の巻(ドラマ見学5日目)

大いなる愉快な第一歩の巻(ドラマ見学5日目)

ダウン症の役者さんの撮影がはじまるとき、プロデューサーが「ライブ感のある現場ですよ」と、意味深なことを言っていた。

その深い深い意味が、やっとわかった。

岸本家が車で出かけるシーンの撮影前。

ここはミニ草太を演じる小倉匡くんの見せ場だ。

あまりの愛くるしさに、心臓をワシッと掴まれていたら、

「……あれっ?」

ピタッと凍りつく、匡くん。

靴を履き替えなければいけないのだが、足があがらな

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家には人生が染み込んでいくの巻(ドラマ見学4日目)

家には人生が染み込んでいくの巻(ドラマ見学4日目)

こりゃ、どえらい作品となるに違いない……!

笑って泣けるジェットコースターのような脚本や、役者さんの演技もさることながら、撮影セットへ足を踏み入れたときに確信した。

なんなんだ、ここは。
わたしがこの日に訪れたのは、“岸本家の自宅”だった。

巨大な倉庫のようなスタジオの中に、一軒家が丸ごと建っている。ドリフで派手に倒壊するようなハリボテかと思ってたが、屋根も壁もある、今にも住めそうなヘーベル

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ついに出会った!岸本家と岸田家の巻(ドラマ見学1日目)

ついに出会った!岸本家と岸田家の巻(ドラマ見学1日目)

わたしが書いた『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』がドラマ化され、撮影現場へ行けることになった。

「こんな機会はめったにないんやから」

魔法の言葉を唱え、岸田家の母と弟とわたしの三人が神戸からアホみたいな顔をして駆けつけた。これを唱えたのは、ユニバで滝壺に落ちる瞬間の写真を1500円で買わされた時ぶりだ。

前入りもして、朝7時に起きた。

ドラマ化も初めてなら、現場も初めて

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