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飽きっぽいから、愛っぽい〜記憶と場所を巡る連載〜

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講談社『小説現代』で連載していたエッセイがnoteでも全文読めます。地元の神戸市北区、修行の北海道小樽、一人暮らしの東京……記憶と場所を紐づけてなにかを取り戻していきたい。(イラ…
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#日記

飽きっぽいから、愛っぽい|すすめづらいものを、他人にすすめる@北海道札幌

飽きっぽいから、愛っぽい|すすめづらいものを、他人にすすめる@北海道札幌

キナリ☆マガジン購読者限定で、「小説現代11月号」に掲載している連載エッセイ全文をnoteでも公開します。

表紙イラストは中村隆さんの書き下ろしです。

ひとりの医師に、一冊の本を届けるために、北海道へ飛んだ。

十月といえど、全国的に夏日が続いていたので、汗っかきのわたしはスーツケースに半袖のブラウスを詰め込み、Tシャツを身にまとってきてしまった。

新千歳空港の地下から電車に乗り、札幌駅で降

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飽きっぽいから、愛っぽい|絶対に取れない貯金箱@小豆島の旅館にあるゲームコーナー

飽きっぽいから、愛っぽい|絶対に取れない貯金箱@小豆島の旅館にあるゲームコーナー

キナリ☆マガジン購読者限定で、「小説現代4月号」に掲載している連載エッセイ全文をnoteでも公開します。

表紙イラストは中村隆さんの書き下ろしです。

おこづかいをもらえる日といえば、ゲームセンターへ行くと決まっていた。六歳から十歳くらいの間まで、特に通いつめていたが、子どもだけで行ってはいけないと学校から決められていたので、いつも父方の祖母が連れて行ってくれた。

もう今は名前が変わってしまっ

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飽きっぽいから、愛っぽい|遺書が化けて出た@日本海上空

飽きっぽいから、愛っぽい|遺書が化けて出た@日本海上空

キナリ☆マガジン購読者限定で、「小説現代5月号」に掲載している連載エッセイ全文をnoteでも公開します。

表紙イラストは中村隆さんの書き下ろしです。

生まれて初めて、遺書を書いた。書く羽目になった。
三月二十一日、午後六時。押し寿司みたいな分厚い雪が張りついている札幌での取材を満喫し、すみれの味噌ラーメンと、コーン茶のパックをお土産にぶらさげ、わたしは新千歳空港の搭乗待合室をブラブラしていた。

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飽きっぽいから、愛っぽい|ホラ吹きの車窓から@静岡県新富士駅のあたり

飽きっぽいから、愛っぽい|ホラ吹きの車窓から@静岡県新富士駅のあたり

キナリ☆マガジン購読者限定で、「小説現代8月号」に掲載している連載エッセイ全文をnoteでも公開します。

表紙イラストは中村隆さんの書き下ろしです。

母と一緒に、上京する仕事ができた。

新神戸駅から東京駅まで、新幹線のぞみ号に乗って。母は昨年春に心内膜炎の大手術をしてから、神戸を離れることはほとんどなかったので、遠出は久しぶりだ。

四時間も眠らないうちに始発の新幹線へ飛び乗ったのだが、母は

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飽きっぽいから、愛っぽい|エッセイを書くということ
	@パソコンの前で

飽きっぽいから、愛っぽい|エッセイを書くということ @パソコンの前で

キナリ☆マガジン購読者限定で、「小説現代9月号」に掲載している連載エッセイ全文をnoteでも公開します。

表紙イラストは中村隆さんの書き下ろし、今回が最終回です。

わたしはなんのために、エッセイを書いてるんだろう。

二ヵ月前、ちょうど暑くなってきたころから、途中で力尽きるように、書くのをやめてしまう原稿がどっと増えた。下手になったなあ、と落ち込んでしまう日もある。

最近、気づいたことがある

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