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岸田奈美のキナリ★マガジン

新作を月4本+過去作300本以上が読み放題。岸田家の収入の9割を占める、生きてゆくための恥さらしマガジン。購読してくださる皆さんは遠い親戚のような存在なのです!いつもありがとう!
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#福祉

どこかにはいるけど、ここにはいない弟

その時、わたしは、ケーキを選んでいた。 爆裂においしいケーキのために、わざわざ隣の市まで…

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きみの障害ってやつはどの程度だい

弟と母を、車で病院まで送っていくというお役目ができた。 きたきたきた。運転免許を取ってか…

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僕らはお揃いの服を着た、別々の呼吸、違う生き物

title…BUMP OF CHICKEN『アリア』 行動援護従事者(おもに自閉スペクトラム症の人への支援)…

しげると、すすむと、折れない鶴(後編)

「行動援護従業者養成研修」という自閉スペクトラム症の方々をサポートする福祉の資格を取りに…

しげると、すすむと、折れない鶴(前編)

忘れかけていた、というより、忘れたかった記憶がフッと戻ってきた。 弟がまだ幼かったときの…

誰もが小さな“自閉”を持って生きてる

ダウン症の弟が、いっそう流暢にしゃべりはじめた。 半年前までは 「あー、ええ、おうですね…

歯医者の付添いの味

弟を歯医者に連れていくこととなった。 ハミガキ無精がたたって小さな虫歯を作っては埋め、作っては埋めしている万年工事中の姉とはちがい、弟はハミガキでもうがいでも、たっぷり時間をかけてやる。 だから歯が痛いということはないのだが、夕食の席で母がふと、 「良太……歯、ちっちゃなってない?」 と箸を止めて言った。 もともと小粒な歯をそろえている弟は、茶碗の白米を飲むようにペロンチョしていた。 「そうか?こんなもんちゃうの」 「気になるわあ。もう何年も歯医者行ってないし、

車を使わずにドライブスルーしはじめた時、母は希望を掴む

このnoteは、ひとつ前に書いたnote↓の後編です。 十五年前、母が長期入院をしていた話の続き…

姉のはなむけ(姉のはなむけ日記/最終話)

季節が変わった。 朝、目が冷めた瞬間、汗ばんでいないことに気づいた。あんまり暑くない。こ…

お金では手に入らなかったもの(姉のはなむけ日記/第22話)

しゃべりが、達者になった。 週末、実家へ帰るごとに、おどろいてしまう。弟のしゃべりが、目…

亀の名は(姉のはなむけ日記/第21話)

グループホームに看板がついた。 なかの工芸のお父さんと妹さんが、車で運んで、スコップかな…

こちょこちょ(姉のはなむけ日記/第20話)

弟の電話は毎晩、続いていた。 「あのな、あのな、あのーな!」 からはじまり、興奮している…

さみしさはまぶしい(姉のはなむけ日記/19話)

母とわたしと弟と、そろって晩ごはんを食べた。 そのあと弟は、お風呂に入った。シャワーの音…

通報する神あれば、親切する神あり(姉のはなむけ日記/第17話)

弟がグループホームへ本入居することに決まったので、そうと決まれば、いろいろと決まりごとの確認や、送迎車もドライバーさんの募集をしなければ。 わたしと母と弟で、再び、グループホームを訪れた。 中谷のとっつぁんと、スタッフさんたちが待ってくれていた。 他の入居者枠も、あっという間に埋まってしまったそうだけど、今日はまだ誰もいなかった。 こういうちゃんとした場に座ると、弟は姿勢を正して、やや顔がこわばる。 「良太さん、なに飲みます?」 「あー……じゃあ、ぼく、お茶を、お