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【キナリ杯受賞発表】特別リスペクト賞⑤

特別リスペクト賞28「文豪どうかしてほしい賞」

これから文豪になってほしい、あわよくばどうかしてる逸話が後世に残るくらいの売れっ子になってほしい文章に贈る賞です。作家の進士素丸さんをリスペクトしました。

ストーリーは王道です。だれにもまったく予想ができない結末はではないけど、だれでも「そうあってほしい」と願う結末なので、読んでいてとても気持ちが良いし、情景が想像できてぽろぽろ泣けてしまう。

だけどその王道なストーリーを、ネットで最後まで読ませることの、なんと難しいことか。

起承転結や伏線があり情報量の多い小説というジャンルを、長文に向いていない横書きで、スマホやPCの画面を見て読んでもらうっていうのはめちゃくちゃ難しいんです。慣れていない人じゃないと、まず離脱してしまう。

バイク川崎バイクさんは、たぶんそこまで計算して、この圧倒的に読みやすい一文あたりの量と、改行をしているはずなんです。文章って実は、長くするよりも、短くする方がとっても難しい。最低限のセリフと、最低限の地の文にするというのはすごく勇気がいることなのに、絶妙なセンスでそれをやってのけているバイク川崎バイクさん、本当にすごいです。このまま映像作品になってもおかしくないので、小説と脚本とコントの良いとこ取り。

キナリ杯はまず「スキ(ハート)」の数を一切考慮していないのですが、それでも、noteの小説というジャンルで、ここまでの読者がついていることに感動しました。もうこれはショート・ショートというより、バイク川崎バイク節みたいな名前がつく作風なんだと思います。文学部の教科書に載るはず。


特別リスペクト賞29「旅立ちのSUN賞」

旅にまつわる文章に贈る賞です。個人でものすごい応援をしてくれたざっつさんさん(さんを重ねてるわけじゃないよ)をリスペクトしました。

お妻さんの大好き具合が120%で伝わってきて、読んでるこっちがデレデレしちゃうな。

『そんなん決まってるやん、結婚したら幸せになれると思ったから。』

この種明かしを最後に持ってくるのは本当にずるくて、デレデレがとろけきってしまうんですが、幸せなゴールに向かうために二人で歩んできた道のりを、お妻さんへのリスペクトたっぷりに書いていらっしゃって、この文章自体が旅だなあと思いました。作中で旅のエピソードも出てきているので、この2つの融合が本当に素晴らしい。


特別リスペクト賞30「and recipe賞」

おいしくて楽しいごはんや、おやつについて書いている文章に贈る賞です。素敵なレシピがいっぱい載っているand recipeをリスペクトしました。

momoさんの何気ない記憶と、何気ないパンの絵が並んでいる記事ですが、読んでいくとパンの匂いがしてくるし、お腹が減ってきます。写真じゃなくて、あえて手書きの絵っていうのもすごくいい。ディティールや色の書き込み具合から「この人、本当にパンが好きなんだな」と思えてきて、なんか嬉しくなっちゃう。わたしはパンの精霊だったのかしら。10年ぶりに絵を描き出したら、なぜかパンの絵ばっかりになっていた、っていう無意識さも愛しい。

思わず目をつむってしまうほど美味しかった。家にクロワッサンがあると幸せだった。朝のトーストが時々クロワッサンになったり、おやつに食べられるのも嬉しかった。
だけど毎日あるわけじゃなかった。

ほら、匂いがしてきそうじゃないですか。なぜならこれって、わりとどの家庭にもあるあるの出来事だからだと思うんです。でも、普通なら通り過ぎてしまうような記憶を、こうやって絵と言葉にしてくれるので、みんなで共通体験ができる。尊いことだと思います。

※and recipe賞は、and recipeさんのご厚意で「いつかの食事券」が副賞として贈られます。受賞者の都合にあわせて、and recipeさんが好きなものを好きなだけ食べていただける食事会を開いてくださるとのこと。もちろんお住まいの場所や、外出自粛の影響などもありますので、実現しなくとも、心でお食事会を想像していただけますと、嬉しいです。


特別リスペクト賞31「阿部広告太郎賞」

言葉で大切な人の心をつかみにいこうとする、まっすぐで熱量のある文章に贈る賞です。コピーライターの阿部広太郎さんをリスペクトしました。

冒頭、銭湯のシーンと、聞こえてくるおじさんの声ではじまるっていうのが良いですよね。情景が目に飛び込んでくるし、なにかが起きそうな予感がして引き込まれました。上手いなあ。

日常で遭遇した銭湯の話から、自分の心の奥にあるつながりの話までの移り変わりが見事なのですが、グミが好き(名前もいいね)さんの記事には、たくさんの素敵で強い言葉があふれています。

自宅の狭い浴室では、頭の中でグシャグシャになってモヤモヤした糸のかたまりを、キレイにほどくことはできない。
でもプールを不潔と思わないのは、プールに集う人々がその人にとって、「愛情の伴う他者」の範疇に入っているからだ。
今の時代、いつでも、どこでも、誰とでも、他者とつながれる。歴史上最も他者が隣にいるであろう時代。しかし最も他者を好きか嫌いか区別できる時代だ。
どんなに貧しい国でも、紛争が終わらない国でも、独裁国家であっても「I love you」が訳せない国はないのだから。そこに、少なからずの希望を感じる。

思考の深さと、それを軽やかに表現して刺さるように作られた言葉が、本当にすごいんです。この人ただ者ではないな、と思ってプロフィールも読ませてもらったのですが、最低限のことしか書いてないし、SNSも連携してないし、名前で調べてもなにもヒットしなくて「なんかものすごい文章を書く仕事の人が、名前を伏せて投稿してるんじゃないか」と困惑してしまうくらいの文章でした。あなたはいったい何者なんだ。


特別リスペクト賞32「生と死をかんがえる賞」

生と死について考えたり、自分の体験を書いていたりする文章に贈る賞です。医師の西智弘さんをリスペクトしました。

「生と死」というかなり重いテーマなので、おもしろさをうたって開催したキナリ杯では選定が難しいんじゃないかなと思ったのですが、そんなことはありませんでした。こんなにも美しい、死のお話と巡り会えたので。

前日のあらすじを書いているところが、すごく上手い。ページをさかのぼって読み返すって意外と大変なことなので、「おばあちゃんが亡くなって、たった50日後におじいちゃんが亡くなった」という簡潔な説明でまとめているのが、読み手のことを思いやりつつ、家族の素晴らしさを伝えたいって気持ちがブワワワッて伝わってきました。読まずにはいられない、あらすじ。

私はずっと前から、おじいちゃんの亡くなり方を気にしていた。
だからこそ、亡くなるのであれば今がそのタイミングだ、と思った。亡くなってほしいなんて思わないけれど、亡くなるベストなタイミングはあるのではないかと。
おじいちゃんは、今が亡くなるベストなタイミングだ。

きっと現実ではなかなか口に出せないであろう言葉を、心のなかで探って、文章にされたことに、生きる尊さを感じます。亡くなるベストなタイミングなんて、不謹慎だと思う人もいるでしょう、でもこれは飯尾さんの正直な気持ちであり、前に進むために必要不可欠な名づけだったのだと思います。美しくも、どこまでも正直な死の描写に、さわやかな読後感が残りました。読んでよかった。



以上で、特別リスペクト賞の発表は終わりです!




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記事にいただいたサポートのお金で、母や弟(岸田家)と「したことない体験」に挑戦し、新しく記事を書きます。いつも応援ありがとうございます!

スキに圧倒的感謝
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28歳の作家。100文字で済むことを2000文字で伝える。車いすユーザーの母、ダウン症の弟、亡くなった父の話など。講談社・小説現代 連載、文藝春秋2020年1月号巻頭随筆 執筆。コルク所属。 Official WEB→https://kishidanami.com/

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