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教習所で、教官の指示がわからない〜この夏、私は運転免許がほしい〜

どういうわけか、よく中国人に間違えられます。
顔なのか、雰囲気なのか、わからないんですけど。

キラキラ女子に憧れて、ことりっぷ片手に沖縄に一人旅したことがあって。
免許ないから、窓口で観光ツアーを予約したんですよ。

したらさ、当然のように、中国人向けのツアーに放り込まれた。
しかもなんか、団体客のツアーで。
火を見るより明らかな、アウェイ。
バスガイド、パンフレット、オール中国語。
キラキラ女子どころか、私だけスパルタ留学だったわけで。

本題。

9年ぶり、2度目の教習所入校を果たしました。

高校3年生の時に、教習所に通ってて、
なんなら卒業までしてたんだけど。
本免許取る前に仮免許が失効するっていう、まあ、
言い訳のしようもないミスで、パアにした馬鹿が私。

この9年間、だましだまし、運転せずやってきたんですけど。
ついこの間の夜。
部屋でひとりストロングゼロ飲んで、
魔法使いチャッピー(1972年)を観てて。
エンディングの「ドンちゃんの歌」が流れて。

ぼくドンちゃん♪
コロコロのパンダくん♪
みかけは小さなくまだけど♪
くるまはA級ライセンス♪

って。
もうね、泣いた。

泣きながら母に「ドンちゃんですらA級ライセンスなのに私ときたら」とLINEした。
自分で言うのもあれだけど、私は一人で酒を飲まない方が良い。

それで翌日、急いで検索ですよ。
「激安 教習所 すぐ取れる」っていう頭の悪すぎるワードで。
見つかるもんだね。

普通自動車免許 教習 16万円。

安い。決定。

電話してその日に入所。
我ながら評価できる、行動の早さ。

もう舞い上がってしまって。

大人になってから勉強とかっこよくね?
教習で運命の人に出会っちゃうんじゃね?
卒業と一緒に独身も卒業しちゃう?

くらいのドリームぶっこいてたんですよ。

意気揚々と教習所に着いて、ドア開けたら。
職員も、生徒も、見渡す限り外国人。

すごい。
日本語が全然、聞こえない。
ドア一枚隔ててすぐ異国。
ことりっぷにもほどがある。

カタコトの事務員さんの

「アー、ココ、すごく安いデス!すぐ免許取れマス!安心!」
「日本人の生徒さんハ、教官も日本人!安心!」
「学科のビデオも日本語あるヨ!安心!」

という怒涛の安心三連発に押され、無事入校。
私、相当、不安そうな顔してたんだろうな。

んで早速、学科受けたんですけど。
動画を再生して、ヘッドフォンを着けました。

うん。確かに日本語。
紛れもない日本語。

ただ、ゴリッゴリの中国語(副音声)が覆いかぶさってくる。

なんていうか。
私の右耳で日本人が話しかけてくるのに、左耳で中国人が叫んでんの。

ちょっとごめん!今大事な話してっから!ねえ!あっち行って!

副音声の方が音大きいってどうなの。
それはもう、主音声じゃないの。
もはや交響楽団。圧巻。圧巻としか言えない。

私はそっと、ヘッドフォンを置いた。


気を取り直して。

学科教習はね、自主勉強もできるから。
大切なのは技能教習ですよ。うん。

事務員さんが言ってた通り、夏休みなのに予約はすぐ取れた。
安心した。

技能教習が、隣県の奥地で行われると知るまでは。
家から2時間。思わず地図を二度見。

うん……まあ、東京の土地、高いもんね。
教習料金が安いんだから、仕方ないよね。
ちゃんと調べなかった私も悪いね。うん。


……2時間かあ。


土曜朝5時にアラームが鳴って「無理」と100回は思った。
技能教習当日。
駅から徒歩40分なので、送迎をお願いしました。

到着したマイクロバスに乗り込む。
満面の笑みで迎えてくれる、若い男性の運転手。
たぶんなんか言ってくれたんだけど、ビタ一文たりとも聞き取れない。

名札に「王梓豪(仮名)」って書いてあって、
読めないから調べたら、ワン・ズハオだった。
よろしく、ズハオ。

座ったら、バスの窓に求人チラシが貼ってあって。
「送迎バス運転手・指導員・事務員募集中!」って。
それぞれの役割がイメージしやすいように、業務中の写真もあって。

うん。
それぜーんぶ、満面の笑みのズハオ。
フリー素材かのごとく使い回されるズハオ。
お前しかいねえのか。

そんで、教習所。
うん。
どう見ても、畑。これは畑。

私、魔女のナミです。こっちは教習所の畑。

途中から道なき道を突き進み始めた時から、嫌な予感はしてた。
教習所の周りが畑っつうか、むしろ畑に教習所がある。
なんならちょっと、路肩に大根とかアロエとか植えてある。

岸田奈美、齢28にして、ファーム送り。
ドラフト指名きてたっけか?

土の匂いを感じながら、指定された教習車に乗り込んだら。
助手席にいる、満面の笑みのズハオ。

教官、ズハオじゃねえかよ!
日本人って言ったじゃんかよ!なんでだよ!

ただ、ズハオ、めっちゃ良いやつ。

「岸田サン、一回乗ったことあるは余裕ネ!」

うん、まあ、教習所を卒業した女だからね。
余裕、余裕。

「じゃ、シュパーツ」

はいはい。
まずブレーキ踏んで、エンジンでしょ。完璧。
ギアもPからDに変更。スムーズ。
えっと、次はサイドブレーキを引く。
ええと。……ええ〜……っと……。

思いっきり引いたわけ。
したら、思いっきり、リクライニングしたわけ。

突然、視界から消えるズハオ。
倒れ込む岸田。見上げる天井。

沈黙。

「それ違うヨ」

ズハオ、そんな真顔もできたんだ……。

冒頭からハリウッドドリームザライド・バックドロップをかました私ですが。
死にたくなる気持ちを抑え、走行開始。

教習所にはカーブが4箇所あって、延々と回るんです。

順調、順調。

ただ、ね。

カーブのすぐ横に、野焼きしてるおばあさんがいる。
ナチュラルに、野焼きしてる。

おばあさん、ここ、教習所!

「ハイ、曲がる前に確認。ミラー、窓ミラー、目視ヨ」

ミラー。
窓ミラー。
目視。

野焼きのおばあさんを、目視。

そんな巻き込み確認、ある……?

かれこれ20回は目視した。
野焼きのおばあさんを。
最後の方、わりとアイコンタクトもできるようになってた。

「じゃ、6番、曲がル」
「は、はい」
「アッ!その前にソミ、シャターして!」
「……?」
「ソミシャターン!急いで!」

え……?

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「創味……シャンタン?」
「ハァ?」

助けて。

結局、創味シャンタンとしか聞こえないまま、乗り切った。

運転免許が無事に取れるかは、わからんけど。
ズハオはじめ、教習所の皆さんがめっちゃ良い人なので、楽しく続いてます。

これが本当の「煙に巻く」。
なーんつって。

だはは!

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週末にグループホームから帰ってくる弟や、ばあちゃんと美味しいものを食べます。中華料理が好きです。