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早稲田大学で、ズンドコベロンチョの話をしなくて済んだ

会社から頼まれ、早稲田大学の大隈塾で、講義をする機会をもらった。

大隈塾ってなんぞやと思って夜にインターネッツで調べたら、過去の講師に、田原総一朗さん、石破茂さん、堀江貴文さんなどの名前が並んでいて、すぐに閉じた。すぐに閉じて、ブックマークの一番上にあった、フジテレビオンデマンドを開いた。世にも奇妙な物語が面白かった。

与えられた時間は、180分。

180分って……。

90分程度であれば、USJのハリウッド・ドリーム・ザ・ライドに乗る待ち時間である。まだ大丈夫。

しかし180分ともなると、ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド〜バックドロップ〜の待ち時間に匹敵する。最初はチュロス片手にキャイキャイ喋りながら並んでいたカップルも、180分も経てば無言で何度も見たはずのインスタのストーリーを死ぬまで再生し続けるゾンビになっている。知らんけど。

バリアフリーとビジネスについては、会社でもよく話しているので、そこそこスルスル話せるはずだ。多分。90分くらいは。

問題は、フリートークと、質疑応答なわけで。
私は、典型的な、ネット弁慶なわけで。

noteやTwitterという文章のツールを与えられれば、私はめちゃくちゃ喋る。いらんことも、いることも、喋り倒す。

上沼恵美子のおしゃべりクッキング並みに喋る。ちなみに、料理番組でアシスタントが「ほんとに外食が一番よろしいわ、夏場は」と言い放つ番組を観たのは後にも先にも初めてだった。めちゃくちゃ笑った。

でも、べしゃりとなると。これが、まあ。
なーんも、面白いことを、べしゃられへんのですわ。

一晩、悩みに悩んだ結果。

「これはもう言葉に詰まったら、ズンドコベロンチョの話をしよう」と、腹をくくった。

ちなみに、母に弱音を吐いたら「謎の小袋80袋、投げとき」と言われた。

いかに正月、昔のフジテレビのバラエティ番組しか観ていなかったのかを疑われる親子関係である。投げれるか。

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結果的に、ズンドコベロンチョの話は、しなくて済んだ。

大隈塾に来てくれた学生さんが、真綿のように温かく、迎えてくれたからだ。まず、ほとんどの学生さんが、私のnoteを読んでくれていた。

どうやら、講義を運営する学生さんが、気を回してメーリングリストで送ってくれたらしい。圧倒的ホスピタリティ。

何ヶ月も前から、主担当となって準備をしてくれた、宮崎桜子さんのおかげだった。8歳年上のはずの私が、早稲田大学に入った途端、生まれたての子羊のような足腰になっていたので、安心感がハンパなかった。母鹿だった。

なんだかなあ、こんなこと言う大人になりたかねえなあ、って思ってたんだけど。これ以外の言葉が、思い浮かばない。

「こんな若いもんがいてくれるなら、日本の未来には希望があるなあ」

言っちゃった〜〜〜〜。

でも本当に、すごかった。

事あるごとに、拍手をくれる。頷いてくれる。
メモを取る手をひっきりなく走らせてくれる。
質問の手も、あがる、あがる。

それがさ、講師に向けてだけなら、できるかもしんないよ。
違うの。
学生同士でも、やってんの。もう文化なの。

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参加してた一学生が、こんなん描いて、すぐTwitterで送ってくれるんだよ……?自主的だよ?すごくない?(しおりん、ありがとうね)

そんなこんなで、いることや、いらんことを、おしゃべりクッキングしながら「あ〜私ってこう思ってたんだな」と再認識できて、とても楽しく、優しく、特別な時間になりました。


さいごに。

講義が終わった後、私にもらった質問に、ここで答えます。(ご本人承諾済)

「友人が家族を亡くし、ふさぎ込みがちになった。元気になってほしいけど、なんと声をかければ良いかわからない」

とても優しい学生さんから、尋ねられた。

人生には、解決策がある苦しさと、解決策がない苦しさがあります。

解決策がない苦しさは、ときに絶望と言われます。例えば、大切な人やペットの死など、代わりのきかないものを失った時。

私は、父が亡くなった時、母が集中治療室にいた時、絶望しました。

「神様は越えられない試練を与えられないよ」「お姉ちゃんなんだから、気をしっかり持って」「応援するよ」と沢山の応援の言葉をもらいました。

でも、どんなに優しい言葉も、素直に受け取れなかった。

「そんなこと言ったって、あなたの家族は死んでないじゃん」
「あなたと私は違う」
「私の辛さなんか、どうせ誰にもわからない」

本当に辛い時、私は、他人の言葉に耳を傾ける余裕がなくなりました。

でも唯一、嬉しかったのは、残った家族が、泣いてくれたことです。

一緒に絶望してくれ、立ち直らなくてもいいから、好きなだけ泣く時間を私にくれた人たちの存在が、本当にありがたかった。

私の場合、絶望は、ゆっくり長い時間をかけて向き合い、風化することでしか、なくなりませんでした。バケツになみなみ貯まった水が、蒸発するのを待つように。

絶望は、他人の応援の言葉で、滅多になくなるものでは、ないのでしょう。

だから「何かしてあげたいけど、何をしたら良いかわからない」ならば、焦りはぐっとこらえてください。

友人の話を聞いて、事実を受け入れてください。そしてもし、その友人と同じように悲しく思ったのなら、素直にその気持を伝えてあげてください。

ただ、それだけで良いと思います。

それができないなら、無理に言葉をかけずとも、じっと待つだけで。「辛くなったらいつでも話を聞くよ」「ひとりじゃないよ」ということが、言葉でも、態度でも、伝われば、ただそれだけで。

もちろん応援の言葉がほしい人もいます。

そういう時は「応援してほしい」「元気づけてほしい」というのがわかるまで、待ってほしいんです。

でも、なんであれ、何か力になりたいと思うあなたの気持ちは、その愛は、ものすごく尊くて、あなたのような人に、私も毎日を生かされています。

いつもありがとう。
これが正解かは私もわからないけれど、とにかく、ありがとう。

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記事にいただいたサポートのお金で、母や弟(岸田家)と「したことない体験」に挑戦し、新しく記事を書きます。いつも応援ありがとうございます!

スキに圧倒的感謝
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28歳の作家。100文字で済むことを2000文字で伝える。車いすユーザーの母、ダウン症の弟、亡くなった父の話など。講談社・小説現代 連載、文藝春秋2020年1月号巻頭随筆 執筆。コルク所属。 Official WEB→https://kishidanami.com/

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コメント (4)
感動しました(T_T)
岸田さんの文章が好きで、岸田節からの質問の答えが最高すぎです。それにしても、ズンドコベロンチョの話気になります。
最後まで読んだ上で、やはり田原さんや石破さん、堀江さんたちと同じくらい大事なお話しをされたんだなと感じました。
ありがとうございました😊大隈塾は、毎年ミライロさんに学ばせてもらってることも、拍手と感謝の文化になってます(^^)
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