【キナリ杯受賞発表】開会式&特別リスペクト賞①
岸田奈美がおもしろい文章を読みたくてはじめた文章コンテスト「キナリ杯」の授賞式をはじめます!
みなさん、各々で授賞式っぽい音楽を準備してください。音楽がない人は両手を打ち鳴らしましょう。ヨ〜オッ!
【追記】全受賞式が終了しました!受賞作品はこちらのマガジンから全作お読みいただけます。
キナリ杯 基本情報
募集期間 2020年4月30日〜5月31日
賞金総額 10万円 → 100万円
賞 数 15賞 → 39賞
受賞人数 20名 → 53名
応募総数 4240作
応援者数 115名
運 営 主催:岸田奈美、審査員:岸田奈美、企画:岸田奈美、事務局;岸田奈美、後援:岸田奈美
2020年5月30日「朝日新聞 全国版 」朝刊でキナリ杯が紹介されました。
【お詫びとご連絡】
全作品を岸田ひとりだけで読んで審査しました。途中「岸田が読んだ記事にはスキをつける」とTwitterでお伝えしていましたが、予想以上に応募作が増えたため、noteのシステム仕様上、1日につけられるスキの上限数を越えると、スキがつけられなくなりました。スパム対策とのこと。わたしからのスキがついていない作品もすべて読みましたので、ご安心ください。
受賞発表スケジュール
受賞された方へ、賞金について
みごと受賞された方には、わたしと、115名の汗と涙と歓喜の詰まった賞金をお渡しします。
本日から7月末までに、順次noteのサポート機能を使って送金いたします。該当期間はサポート機能を、ご自分のnoteに設定しておいてください。(サポート機能の設定方法はこちら)
のっぴきならない状態で設定ができない方は、こちらまでご連絡ください。
送金時期が遅くて申し訳ありません。カンパで集まったお金がわたしの手元に届くのが7月中旬のため、お待ちくださいませ。
受賞発表の前に
キナリ杯は、岸田奈美がおもしろい文章を読みたくて、お気に入りの文章を褒めちぎり、みんなにもおもしろがってもらいたいがために開催しました。
おもしろい文章を書いてくれた人をみんなで褒めちぎり、まんまと「じゃあまた書いてみようかな」と思ってもらいたいので、作者さんのnoteやSNSをフォローしたり、スキを押したりしてくださると、ウルトラハッピーです!
お気に入りの文章を見つけたら、ぜひSNSでシェアしてみてください。作者さんもわたしも、飛び上がるほど嬉しいです。ぜったいに見ています。
杯という名前をつけてしまった以上、わたしが選ばせてもらったのですが、わざわざ頭の中を目に見える言葉にして、文章を書いて、noteで発表というド面倒なことをやってくださった時点で、選ばずともみなさんが優勝なんです。
どうか、どうか、それだけは受け取ってもらえたらと思います。だから、ここに載らないあなたも、今夜はビールをかけあい、寿司か肉を食らい、道頓堀で踊り狂うつもりでお願いします。飛び込んではいけない。
特別リスペクト賞とは
わたしが大好きな人、またはキナリ杯を応援してくれた人をリスペクトしてつくった賞です。増え続けて、なんと、32賞あります。
名前や企業名を冠していますが、選んだのは全部わたしです。賞の詳しい説明などはこちらから。
特別リスペクト賞1「気高きいかれた女賞」
誇り高く、いかれた女にまつわる文章に贈る賞です。わたしの愛しき友人・森真梨乃さんをリスペクトしました。
いきなりアクセル全開で飛び出た「最強になりてえ」という欲望、漫画のキャラクターへのリスペクト、画数とエムグラムを使ったキャラクターの本格的な性格分析、なぜか取り憑かれたように繰り返すオセロ、そして最後にはまた性格分析に戻って漫画のキャラクターに近づけたかを判断する話。
「最初から最後までどういうことやねん」と言ってしまいたくなるのに、気がついたら手に汗を握って、彼女を応援してしまいます。エムグラムが伏線になっていて、最後に回収するのも見事。平成を代表する屈指の人気バラエティ・トリビアの泉を彷彿とさせる、シュールさと本気さと気持ちよさです。ただの面白い実験ではなくて、一人の女の成長譚としてストーリーになっている、センスのありすぎる構成力だよこれは。
あと、演出として使われているスクリーンショットや、わざわざ作ったであろう画像も秀逸で、この「どういうことやねん」な流れをめちゃくちゃスムーズに繋げてるんですよ。監督、脚本、演出、主演、全部しりひとみ。あっ、主題歌だけCHA-LA HEAD-CHA-LA。でもたぶんこの女ならCHA-LA HEAD-CHA-LAすらも自分で歌い上げる。すげえとしか言えねえ。
特別リスペクト賞2「ロバート・ツルッパゲ賞」
純粋な子どもみたいな視点を持ち、自分をさらけ出している文章に贈る賞です。カメラマン・ワタナベアニさんをリスペクトしました。
シルバニアファミリーの赤ちゃんはいいぞ。ただ、それだけを書いている記事です。でもシンプルな料理こそ、作り手のこだわりが活きてくる。出汁しかり、ウイスキー水割りしかり。だからこそ、この記事を読むと「シルバニアファミリーの赤ちゃんはいいぞ」以外の感情が失われるのでしょう。シルバニアファミリーの赤ちゃんはいいぞ。(洗脳)
もうね、めちゃくちゃかわいい。シルバニアファミリーの赤ちゃん。存在しない親戚の存在しない甥っ子を微笑ましく見ている気分になります。そんな気分になるのは、それだけ記事にみやまさんの愛しすぎる目線が込められているから。この短い記事にはなんと「かわいい」という単語が11回も使われてる。たぶん初孫が生まれてもそんなに言わない。もはや暖かくて穏やかな狂気すら感じます。
指導教諭の指導に心が折れそうなときも、「まあ私のポケットにはかわいい赤ちゃんが住んでいるんですけどね」という余裕でなんとか乗り切ることができた。
これは、「赤ちゃんと出会ったことを友人らに打ち明けたら何故か皆赤ちゃんを所持していたとき」の写真である。かわいい。皆我が子の撮影に夢中になり、次の授業に遅れそうになったのを覚えている。
シルバニアファミリーのかわいさだけに頼らず、こういうフフッと笑ってしまう日常の思い出が短く織り込まれているのも最高です。
あとね、写真がね、めっちゃいいよね。ガチだよね。どんな表情して撮ってるか伝わってくるよね。写真の良さを演出するのは、ときに言葉である、と新しい気づきをもらいました。
特別リスペクト賞3「読みたいことを、書けばいい賞」
作者が読みたいものを書いている文章に贈る賞です。田中泰延さんをリスペクトしています。
他人がトイレでどうやって尻を拭いてるか、みなさん興味ありますか。たぶんないですよね。だから、あらしろひなこさんはたぶんこれ、自分のために書いたと思うんです。いやごめん、知らんけど。他人や世界平和のために書いているかもしれない。そしたらどうしよう。
これだけ突拍子もなく、かつ地味な話題だと、前置きであれこれ書きたくなるのが人の業ですが、いきなりトイレットペーパーはダブルを使っている、というトップスピードで突っ込んでくるのが素晴らしいです。読者を置き去りにする音速の暴走機関車。
でも、暴走してないんです。語り口はめちゃくちゃ冷静で、トイレットペーパーのメーカーサイトを引用する淑女の余裕っぷり。くだらない話題だからこそ、この語り口が活きてきて、じわじわ笑えてきてしまうんですね。もはやなんかなんたらエキスポだかなんたらカンファレンスだかの大会場でプレゼンテーションされている気分になりました。いったい私は何をプレゼンされているんだ。
しかも最終的にちょっとみんなが役立つ、拭き方の知識みたいなのもあって、「なんかよかったな」と思えるのも嬉しい誤算ですね。
特別リスペクト賞4「アカルク賞」
作明るく自分らしく生きようとしている、またはLGBTについて書いた文章に贈る賞です。友人でトランスジェンダーの当事者・堀川歩さんをリスペクトしています。
美しい小説のような読後感のあるエッセイです。これは本当にいちとせしをりさんが過ごした時間と愛しい人たちとの話なのだと思うと、余計に美しさに呆然とします。だからわたしは事実は小説より奇なりという言葉が好きで、奇なりは美しさにもなると思うんです。
この記事は、最初と最後が、お母さんの言葉ではじまります。よく似ている言葉なんですが、途中のやりとりをすべて読むと、最後のお母さんの言葉に足された言葉がじんわりと体温を持って、胸に広がってきます。この構成はあえて考えたのかな、それとも無意識だったのかな、無意識だと思ってしまうくらい「これしかないな」と思える構成なので、本当にすごいです。
エッセイを書くとき、最初は自己紹介から始まりがちですが、よっぽどおもしろいプロフィールじゃない限り、ただの情報というものは読んでも頭に入らないもの。いちとせさんは、記事の中盤でスッと入ってくるような会話を使って自分のジェンダーや今の状況をうまく説明していて、先入観なしでたくさんの人の胸を打ち、人から人へと広がり、世の中へ届くような記事になってます。
特別リスペクト賞5「好きのおすそわけ賞」
好きなもの、感動したこと、深く考えていること、影響をうけたものなどをおすそわけしている文章に贈る賞です。わたしの担当エージェント・佐渡島庸平さんをリスペクトしています。
ビートルズって名前はもちろん知ってるし、もちろん聞いたこともあるけど、そこまで意識したことがないっていう人は意外と多いと思うんです。わたしも。だから、なんとなく知ってるあの曲を秒単位で説明するって、どんな感じかなってワクワクしました。比喩かと思ったら、本当に秒単位で説明していて笑う。
Spotifyと公式You Tubeっていう、noteで再生しやすい二つのコンテンツを引用しているのが「ああこの人は本当にビートルズが好きで、みんなに一曲でも多く聞いてもらいたいんだな」と思ってしまう心づかいで、素敵です。
(ポール)I know you never even try girl
(ジョン)Why... know... I never even try girl
けっこう派手に間違っているので、ジョンもこのミスに気づき、笑っているというわけ。このレコーディングは完全な一発録りで、演奏しながらレコーディングしている。つまり、ほとんどスタジオで行われたライブ録音みたいなものだ。
そんで、おもしろいのよ、これがまた。おもしろいってギャグとかシュールな表現をしているわけじゃなくて、目のつけどころが細かすぎて、しかもそれが自己満足で終わらなくて、ちゃんとその細かさのおもしろさが伝わるように丁寧に説明してる。しかも秒刻みでピックアップしてるから、本当にジョンが笑ってるの聴くと、フフッてなっちゃう。「というわけ。」とかもう完全にオタクだよ、この文章めっちゃ冷静だけど、たぶんめっちゃ早口だよ。
あと、見どころを紹介してる見出しも、シンプルながらどういうこと?って思える引きがあって気になる。
わたしはとにかく、「自分の好きなものを、愛とリスペクトを持って、人におすそわけしている」コンテンツを好みます。今も昔も、大好きなバラエティはアメトーーク!です。人が一番おもしろいのって、感情が揺れ動いたことを、ていねいかつ熱く話してる時だと思うんだよね。それが120%あふれている記事だったので、もちろん、好きになっちゃいました。
※この記事にいただいたサポート(投げ銭)は、すべて岸田のタピオカミルクティー代に消えます。甘いものが飲みたい。