28年目の食育は、しゃぶしゃぶでやりたい放題やってみた
「しゃぶしゃぶ食べ放題」という看板を見ると、吸い寄せられていた。まるで帰宅するかのように、自然なステップで。
しゃぶしゃぶはいい。
圧倒的な準備の簡単さ。水に昆布投げて火にかけて、豚肉のラップを剥ぎ取り、野菜を適当にザクザク切れば終わり。秒殺。
しかも豚肉の余分な脂がお湯でスルッスル落ちるし、ゆでられた野菜はカサが減ってたくさん食べられる。ビタミンAやらCやらQEDやらが取れる。
と、まあ、いろいろ書いたけど、小難しいことはどうでもいい。大切なのは、しゃぶしゃぶがエンターテイメントであるということだ。
肉をしゃぶしゃぶするのが、とにかく楽しい。
っていうか「しゃぶしゃぶする」っていう専用の動詞が用意されている時点で、格が違う。「どんぶらこ」並に用途が限られている。
お湯のなかでちゃぷちゃぷ泳ぐお肉の色が変わるのが、かわいい。まだかな、まだかなって思う。
鍋やすき焼きは味が一種類に決まっちゃうけど、しゃぶしゃぶはつけダレを無限に変えられる。ポン酢、めんつゆ、ゴマだれ、ゆず胡椒、ラー油。これを一回の食事で味わえる。正気か。
もはや、全部のステージを同時に観られる夏フェスである。
バンプオブチキンと、サザンオールスターズと、サカナクションと、コールドプレイと、小林幸子を同時に観ることができる。脳がバグる。
というわけで、ひとりしゃぶしゃぶをしてみた。
「ひとりしゃぶしゃぶ」と聞くと、哀愁を感じるだろうか。
心配ご無用で、この笑顔だ。
この日のために、鹿児島から超絶うまい黒豚を取り寄せた。最高。優勝。勝利のハイボール持ってこい。
自我が崩壊しないうちにちゃんと紹介しておくと、「ぽぉくしょっぷ遊花里」のお肉セットだ。(記事の最後で紹介するよ)
障害のある人が大切に育てた美味しい豚さんなので、これについてはめちゃくちゃ応援してるから、記事の後半で紹介するね。
左が「黒豚下ロース」で、右が「黒豚カタロース」。
輝いている。絹かな。かぐや姫に献上されたやつかな。
こういう、薄くて美しくて上等な肉を久しく見てなかったのでドキドキする。肉が動悸にダイレクト。
とても大切に育てられたのか、一枚一枚の肉がのびのびと羽を伸ばしていて、皿からはみ出た。
圧巻。こぼれイクラならぬ、こぼれ豚である。ここでお目にかかれるとは。
これこれこれこれ!これだよ!しゃぶしゃぶの醍醐味はよお!
肉をしゃぶしゃぶすると、脳内に快楽物質が染み出していく。快楽物質が血管を渡って表情筋をひっぱり、わんぱく意地悪おこりんぼうもニタリ顔になる。
ちなみに最初に言っておくと、家庭特有のトンチンカンな事情でわたしの箸の持ち方はおかしい。普段は直そうと頑張ってるけど、今日ばかりはテンションが急激に上がりすぎて、野生に戻ってしまった。
ついでにコップに注いだのはシャンパンである。やりたい放題のマリアージュ。
ウマァァァァァアァァ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!
右耳からサザン、左耳からバンプ、両目から小林幸子が流れ込んでくる。幸福というモッシュに押しつぶされてしまう。ウンマァ。
ちなみにこれ食べた人しかわかんないと思うけど、アクが全然でない。びっくりした。だし汁、キラッキラ。
完全に肉を4、5枚食らったあとの写真で申し訳ないが、つけダレは「めんつゆ」「ごま」「ポン酢」を用意した。
これらを好きなだけループする。はあ。この世の片隅に許された楽園。
この豚肉、すごい、味が濃いの。みんな豚肉の味ってわかる?想像つかないよね?わたしもわかんなかった。でも、豚肉の味が濃いの。ぜんぜん獣臭くない。甘みと旨みがジュワァッて、頬の真ん中から下あたりに伝わっていくの。ちょっとそれ喉までいったら死なない?大丈夫?って思っちゃう。
だけど後味が超さっぱり。
「えっ、いまわたし、なにか食べた…?」「ばっかもん!それがルパンだ!追え〜〜〜!」って感じで、また一枚食べちゃう。なにごと?
ろくなもん食って生きてないから、わたしのこの感想にどれほどの価値があるかわからないけど、人生で食べた豚肉のなかで一番美味しかった。
やめられない、止まらない。
まあ、あえて、どうでもいい話をするとすれば。
わたしは「ぽぉくしょっぷ遊花里」を知らなかったんで、全国の障害者の福祉事業所に詳しいめっちゃエライ人に「なんか美味しいもの教えてください」って言って、取り寄せてもらったんだけど。
興奮しすぎて「あしたシャブやります」って送ってた。アカン。(アカン)
しかもわりと2時間くらい既読スルーされていて、これマジで通報されたかも終わったかもってビクビクしてた。申し訳ございません。
ぽぉくショップ遊花里(ゆうかり)について
さて、わたしは外出自粛期間で打撃を受けてるけど、めちゃくちゃ美味いモンを作ってくれる福祉事業所を全力で応援したいと思っているので。
「ぽぉくショップ遊花里」さんに、取材もさせてもらいました。
もともと社会福祉法人ゆうかりは、鹿児島で知的障害・発達障害のある人のためのグループホームやデイサービスを運営しています。53年前から。ご、53年前から?!?!?!?
いま、グループホームでは80名の障害のある人たちが暮らしています。年齢は幅広く、20代から60代まで。
グループホームだけじゃなくて、保育園も運営してるんですけど、これもほんと素晴らしくて、「子どもたちが障害のある人とも自然に触れ合える」ことを目指されてるんですよね。
障害者として完全にわけられて育つんじゃなくて、地域の子どもたちと一緒に育ったから、社会のルールや思いやりを学んだ我が弟のことを誇りに思っているので、この取組みには賛同しかない。尊い。
ゆうかりの「地域で自然と暮らす」という思いで生まれたのが、「障害のある人が、鹿児島名物の黒豚を育てる」という仕事。
畜産業って、めちゃくちゃ大変なんですよ。ご想像のとおり。それでも美味しい黒豚をみんなで大切に育てよう、いのちのサイクルと恵みを社会に還元しよう、という思いであふれてるんです。ここは。
いまはオートメーション化が進んでいて、餌やりや掃除も機械で効率よく済ませる養豚場も多いとか。できるだけ人の手がかからないようにするのが主流なんですね。
でもゆうかりでは、あえて人の手をかけるようにして、豚と触れ合いながら育てているそうです。2〜3人で一頭の豚を世話するのだとか。
豚も飼育してくれる人になついて、あとを追いかけたり、いたずらしたりするらしいです。
牛や豚や鶏を一から育てて食べたことがないわたしが言うのは、すごく後ろめたいんだけど、その話を聞いたとき「ちょっと切ないな……」って思ったんです。
でも豚の肉って、愛情を注いだぶん、美味しくなるんだって。安心して、運動ができて、ストレスなくのびのび育つと、柔らかくて味がギュッとつまった肉になる。
豚を食べることは、もう、生活と切り離せなくなっている。しゃぶしゃぶ、生姜焼き、豚キムチ、ポークカレー、ぜんぶ美味しい。
いのちをいただくなら、せめて、幸せに育てられた豚を食べたい。幸せに育てられるのが、当たり前であってほしい。人間のエゴかもしれないけど、わたしはそう思いました。
ゆうかりで働く人、地域の人たちに、いのちのサイクルをわかりやすく教えるために、こんな絵本も作ったそうです。すごいよ。「ただ目の前の豚を育ててる」んじゃなくて、「いのちを大切に感じて、いのちをもらって、美味しくいただくまで」をちゃんと伝えようとしてるんだもん。
WEBサイトに載っている、はたらく人たちの声も読んでいると、こんなに美味しいお肉を作ってくれて本当にありがとう、と思わずにはいられない。
岸田奈美、28歳にして、生まれてはじめての食育を実感。大切。
ちなみに、豚を育てる人だけじゃなくて、餃子をつくる人もいます。
これ、ゆうかりで人気No.1の「本格黒豚餃子」なんだけど、めちゃくちゃ美味い。50個入ってる。一週間幸せだった。これがあるだけでQOLが異常な数値に触れる。豚の味が濃い。
冷凍餃子で、凍ったままフライパンに並べて水入れて焼くだけで食べられるのも良い。最高。3000文字ぶり2度目の優勝。勝利のハイボール持ってこい。
ただ、肉や餃子を卸していた飲食店が軒並み休業や、売上不振に陥っていて、出荷数が激減しているみたいです。
みんなも「しゃぶしゃぶ食って、餃子で優勝」しましょう。
※下記の限定商品は完売しました。お値段変わってしまいますが、「ぽぉくしょっぷ遊花里 WEB」で他の商品も購入できますので、よかったらそちらを。
なんと〜〜〜!!!!!!
「岸田奈美note特別セット」を用意してもらいました。やったぜ。しかも普通に売ってるやつより10%オフです。第一弾は、限定20セットだけ。
「キナリとフクシ」というECサイトを立ち上げましたが、岸田がバカ儲けするためではなく、ECサイトを持っていなかったり、SEOに弱い福祉事業所を応援する移動式キッチンカーみたいなのものなので、安心してご覧あれ。