自宅にギャラドスが出た
私は、木造古民家の長屋に住んでいます。
かつて祖母が住んでたところを、譲り受けまして。
細い裏路地にありすぎて太陽は一切ありませんが、快適です。天井と床が歪んでいて内扉が締まりませんが、快適です。玄関出たところに謎の涸れ井戸がありますが、快適です。
そこで本題。
東京出張だったので、4日ぶりに大阪へ帰ったんです。
そしたら、玄関の前に、メッチャ人がいる。
いるどころか、大挙してる。
溢れ出る、森のおまつり感。
てんとう虫のサンバ。
咄嗟に「あっ、これ火事だ、終わった」って直感した。
でも、違ったようで。
だってみんな、ものすごく楽しそうでいらっしゃる。
スマホ片手に。
夜中の1時に。
怖っ。
とりあえず近くに居たヤンキーを捕まえて、聞きました。
私「あの、これどうしたんですか?」
ヤンキー「お姉さんすごいやんっ!どんだけ遠くから来たん?」
ヤンキーが私のキャリーバッグ(出張用)を見て、急に叫ぶ。
一斉に振り向くボーイズ&ガールズ。
ミッドナイトの視線を独り占め。
言えない。
この家の主ですなんて、言えない空気。
だから、大女優を演じることにした。
私「いや〜あはは……そりゃ、ね。うん、今日ばっかりはね」
精一杯でした。
それから何回も不自然な会話を続けて、節々の単語から判明したこと。
今話題のGPSゲーム、ポケモンGO。どうやらうちの玄関先(井戸)が、有名地点になってるそうで。
私「えっ、何がおるん?」
ヤンキー「ギャラドス」
私「ギャラドス」
ヤンキー「せやで」
完全犯罪を忘れ、私は気がついたら呆然と家に入っていました。
扉越しにも解る、静まり返った外の空気。
えっ今の旅人、普通に家入っていったぞ、的な。
そりゃそうなりますよね。ごめんなさい。
布団にくるまって1人途方に暮れながらも、色々と考えました。
拝啓、お婆ちゃん。お元気ですか?
うちの家、ギャラドスの出現地になってた。
(※ギャラドス=とても強くてめずらしい)
私は子供の頃から、どうにも人気者の輪に入れなかった。
でも、今夜はどうでしょうか。老若男女が、大挙して集うわけです。
ギャラドスすげぇ。
深夜2時になってもアホみたいに外うるさいけど、なんかもう、ギャラドスすげぇ。
私、ギャラドスのおかげであの日夢みた人気者になれるかもしれない。ワクワクが止まらなかった。私、ギャラドスと一緒に、羽ばたけるんだ。
爽やかに朝起きて仕事行こうとしたら、玄関にゴミ散らばってました。
ギャラドス、お前だけは絶対に許さない。絶対にだ。