陸上寿司愛好会を立ち上げることにした
2021年11月1日、陸上寿司愛好会のWEBサイトがオープンしました!今後の最新情報はこちらでご確認ください。
お寿司は好きですか。わたしは好きです。この世にお寿司は星の数ほどあれど、どんなお寿司がいちばん好きですか。
大トロ?
サーモン?
煮穴子?焼穴子?
わたしはね
マヨコーン軍艦。
めちゃくちゃうまい。頭がバカになるかと思うほどうまい。だけどこいつは回ってるところしか見たことがない。回ってない寿司屋にはいない。回ってない寿司屋より、回ってる寿司屋のほうが嬉しい。
正直なところ、全皿これでいい。びっくらポンはマヨコーン軍艦で全弾BETしたい。
でも、大人になってから寿司屋でこれを頼むと、家族や友人から
「ええっ、ここにきて魚を食べないの?」
「寿司屋に来なくていいじゃん!損してるよ!」
「ってか家で食べたら?」
と笑われてしまう。
うるせえ好きなもんを食べてなにが悪い、家で作ったら酢飯やらなんやら面倒やんけ、損じゃねえわ10兆倍得してんだわ!とカチコミたくなるけど、それなりに浅はかな羞恥心を、持ち合わせているので。
「いやあ、たまにこの懐かしい味が食べたくなるんだよね、あはは」
情けなく作り笑いを浮かべながら、5皿に1皿の割合で本命のコーン軍艦を挟むカモフラ食いがわたしっていう脆い人間の象徴なわけ。
「わたし、マヨコーン軍艦が大好きなんだよね」
一度だけ、寿司屋で友人に打ち明けたことがある。すると彼女は
「それは美味しいお魚を食べてないからだよ!今度連れてってあげる!」
と言った。富山の名店にまで行って食べた大トロやウニはたしかに新鮮で、美味しくて、だけどほのかな「コレジャナイ」感が漂っていた。
「やっぱり魚が美味しいでしょ!」
「……うん」
東京に戻り、力のないその足でスシロー五反田店ののれんをくぐり、わたしは孤独ブース(なんでか知らんけど両脇が壁で遮断されて完全に一人で食える席、デメリットは目視できるレーンが短すぎること)に座った。
ずっと、歯がゆかった。
かっぱ寿司の寿司特急に乗って爆速で駆けつけてくれたマヨコーン軍艦が、わたしの作り笑いで、泣いていた気がした。
本当は、胸を張って大好きだって言ってあげたかった。
マヨコーン軍艦、なっとう軍艦、サラダ軍艦の大艦隊が涙でにじむ。
玉子にぎり、牛カルビにぎり、テリヤキハンバーグにぎりたちの合掌が聞こえる。
ああ、遠い海の向こうで手を振ってるのは、カリフォルニアロールじゃないか。
こいつらは決して、お子様寿司でも、ザコ寿司でもない。
立派な、陸上寿司なのだ!
陸上寿司をだれもが堂々と美味しく食べられる社会の実現を目指し、ここに、陸上寿司好きによる陸上寿司のためだけの架空団体「陸上寿司愛好会」を立ち上げることを宣誓します。
「陸上寿司(りくじょう-ずし)」とは、陸で獲れたネタを使ったお寿司のこと。さっき思いついた。
ざっくりわけると、野菜系(コーン、サラダ、アボガド・かっぱ巻など)・お肉系(牛カルビ、照り焼きハンバーグ、生ハムなど)・卵系(たまご、うずら、月見とろろなど)・独立系(いなりなど)がある。
回転寿司各社が創意工夫をこらしたアメイジングな陸上寿司が日々発表され続けており、称賛に値する。健康・宗教上の理由で魚や肉などを食べられない人たちにも、広く間口が開かれている。
対義語として、サーモンやウニなどの海産物を使った海中寿司(かいちゅう-ずし)がある、ということにしておく。
なお、原料は海産物だが、陸で著しく加工された状態で寿司屋に納入されるネタのお寿司(ツナサラダ、カニサラダなど)については「暫定陸上寿司(または水陸両用寿司)」とし、定期的に同好会で議論の上、承認する。
基本的に誰でも手続きすらなく「陸上寿司大好きィ!」と叫んだ時点で即入会できるし飽きたら忘れてもらっていいけど、秩序を守って楽しく愛好するため、以下いずれかひとつ以上を満たす人々に限る。
・陸上寿司を愛してやまない。
・人目を気にせず、堂々と陸上寿司を食べたい。
・陸上寿司がお子様寿司、ニセ寿司などと呼ばれる度に胸が痛む。だがM-1でオズワルドがザコ寿司と言ったのを見て思わず笑ってしまったのが悔しい。
・いつか回らない寿司屋に響き渡るくらい快活な声で「大将ォ!コーン軍艦ひとつッ!」「あいヨォ!」ってやりたい。
・味の薄いネタから順番にいくとかわかっちゃいるけど、できれば初手てりやきハンバーグ一本槍で生きていきたい。
・陸上寿司を思う存分食べるために、ひとりで回転寿司へ行き、孤独と満腹の狭間で気を失いそうになった。
・タッチパネル式でさりげなく注文できるぜと小躍りしたら、どこにもお目当ての陸上寿司がなく、焦りながら探した末に「キッズメニュー」でフライドポテトの横にまとめられていて膝から崩れ落ちた。
・海中寿司も美味しいよ。美味しいけど陸上寿司とはまた別の満足度っていうか、パスタ食べたいのにピザ食べてる感じっていうかさ、とにかく違うんだよ。
・他人の金で食う寿司はおしなべて美味いが、ぶっちゃけ回らない寿司より回ってる寿司に連れてってもらった方が嬉しいのにそんなことは口が裂けても言えない。
わたしたちの目的は、陸上寿司を愛で、陸上寿司を堂々と食べること。
誇りを胸に戦うべきは、陸上寿司への無意識な抑圧と、他者を気にして陸上寿司を正面から愛でられない己自身の弱き心。
決して、海中寿司を憎しみで引きずり降ろし、取って代わりたいわけではないのです。
そもそも寿司とは、保存に限界のある魚をどうすれば楽しんでもらえるかを思いやった末に生まれた愛の産物。なれば寿司と寿司を好むすべての人々への愛がまた、寿司の未来を変えて然るべきでしょう。
陸上寿司愛好会は、あらゆる寿司に敬意を払いながら、陸上寿司の地位向上を目指します。会員には海中寿司ならびに海中寿司愛好家の悪口や妨害工作などを、かたく禁じます。
※陸上寿司愛好会は、すべての寿司を平等に扱うことを誓います。
いろいろと派手にやりたいことはあるんですけど、いかんせん発起人であるわたしの技術力と資金力が絶望的に低いので、今できることからやります。
0.入会を自分のSNSで公言
※入会に申し込みなどは、必要ありません。
ハッシュタグ「#陸上寿司愛好会」をつけて、己の陸上寿司への愛を伝えて、Twitter、Instagram、TikTok、noteなどに投稿してください。強めの主張で圧倒したい人はプロフィールに記載しても。
投稿にこのnoteのURLを引用していただけると、仲間が増えるのでとてもありがたいです。
例文
「#陸上寿司愛好会 に賛同して、入会します!好きな陸上寿司は生ハムマヨネーズ、推し店はかっぱ寿司です!」
「陸で穫れるネタのことを陸上寿司って言うんだって!これからは地球が荒廃しても堂々とおいなりさんだけ食べ続けるぞ!#寿司陸上愛好会」
こちらの画像を使いたいときは保存して自由にご使用ください。
1.陸上寿司愛好会のSNSアカウントをフォロー
陸上寿司にまつわる情報や、同好会員によるツイートを紹介します。
2.陸上寿司を食べたり、議題を思いついたら連絡
「こんな新しい陸上寿司が発表されてた!」「この陸上寿司は革命的に美味かった!」など陸上寿司への愛があふれる情報や、「◯◯って、陸上寿司なの?」「こんなことやったら楽しくない?」といった議題があれば、愛好会本部へお気軽に連絡ください。
連絡方法
Twitterのリプライ、InstagramのDMなどで連絡(すべてにお返事できない場合がありますが、かならずすべてに目を通します)
長文の場合はメールフォームからお送りください。
でっかい予定はまったく未定ですが、夢と希望だけは持ち続けていきます。
0.陸上寿司総選挙
その年でもっとも愛好会員を虜にした陸上寿司を讃えます。
1. 全国で陸上寿司を食べるオフ会
いまのご時世では難しいですが、時がきて世に平穏が訪れたら、全国各地でまったく同じ時間に陸上寿司を食い尽くす会をしましょう。
2.陸上寿司について普段は聞けない取材
陸上寿司を推している店や、握っている大将などに取材し、ここでしか聞けない陸上寿司の魅力を発信し、世間のハートを鷲掴みます。
3.公式WEBサイト開設・会員限定グッズ配布
なんか知らんけど体裁だけ整えといたらちゃんとした団体に見えて、知らんうちに名前だけが独り歩きしてくれんかなという一抹の望みを賭けて。
4.同好会本部運営員を募集
三人よれば文殊の知恵、百人寄ればイナバの物置きってね!今はわたししかいないんですけど、いずれ手を動かしてくれる人を増やし、より充実した活動を目指します。
5.陸上寿司をテーマにした作品を発表
陸上寿司の慈愛、悲恋、友情、努力、勝利をテーマにした作品を書き、なんかのはずみでそれがNetflixで映像化して事務員の手違いでカンヌ国際映画祭とかに出られたら、陸上寿司の名が世界に知れ渡ります。
プロット1.「ハンバーグにぎりの大将」
東京で老舗江戸前寿司屋を切り盛りする大将・洋吉。大の回転寿司嫌いの頑固者だったが、ある日、偏食に苦しむ孫が喜んでハンバーグ寿司を食べているのを目にする。のれんを下げた店でこっそりハンバーグ寿司を握り「へへっ、あっちいんだな、ハンバーグってのは…」と、暖かな涙をこぼすのだった。
プロット2.「アボガドにぎりの幻影」
地位と金と見栄だけが大好きな強欲経営者・石川。舌に自信があると豪語して趣味の食べ歩きに興じるが、町の回転寿チェーン店が貧乏臭くて不味いとこき下ろし、地上げしようとする。そこに現れたのはチェーン店広報の西園寺ハルカ。ハルカは石川に目隠しをし、特上のマグロを振る舞う。石川は舌鼓を打つが、それはアボカドだったと種明かしされ、膝から崩れ落ちる。
プロット3.「生ハムのスタートアップ」
水中寿司の穏健派若手起業家たちが華々しく発表した「限りなくマグロのように見える生ハム寿司」が席巻する。「寿司屋で頼んでも、もう恥ずかしくない!」という触れ回りで、一見、陸上寿司への配慮のようだが、ベジタリアンのアンドレアル吉沢は拳を握る。「寿司を…大好きな寿司を食うことを…なぜ恥ずかしがらなければいけないんだ!」アンドレアル吉沢は、あの有名なDr.ヨガ松を引きつれ、生ハム寿司の試食会場に突撃した。それが片道きっぷだと知りながら……。
こういうのがあと10話分くらいあります。
最後までお読みくださって、ありがとうございました。陸上寿司の未来に、幸多からんことを。
陸上寿司愛好会
発起人 岸田奈美(作家)
わりと真面目な件でのご連絡があればこちらへ
コルクエージェンシーのサイトはこちら
このnote記事にいただいたサポート(投げ銭)については、陸上寿司同好会の活動(WEBサイトやイラスト制作・取材の交通費など)に、寿司に誓って正しく使わせていただきます。
週末にグループホームから帰ってくる弟や、ばあちゃんと美味しいものを食べます。中華料理が好きです。