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我が家の命運は扇風機に託された

亡くなった父は、私にそっくりでした。
そっくりどころか、完全に私の上位互換。
私がゲームボーイアドバンスなら、父はゲームボーイアドバンスSP。
どんくらいのSPぶりかって言うと、私の“衝動性”を3倍にして、私の“短気”を5倍にした感じ。全体的に良いところも悪いところも、クリーム盛り盛りフラペチーノ。

どれくらい短気かって言うと。
子どもの頃に連れて行ってもらった遊園地で、私が一番馴染みのある乗り物。


巨大冷蔵庫だから。


子ども心にわかってた。乗り物ですらない。冷蔵庫って。


他の子どもたちが、ジェットコースターや観覧車でワーキャー言ってるのを横目に、私は巨大冷蔵庫。
なんでかって言うと、並ばないで済むから。主に父が。
でも並ばないで済むって言うのは、誰も並んでないってことだからね。


えっと、平たく言うと、-20℃の世界を体感できる、プレハブ。
中には、薄汚れた白熊のハリボテと、容赦ない冷風と、あと無音。

以上。

なんか、もう、カツオでもよっぽど悪いことしないとブチ込まれないであろう空間。
まあ、でも、そんな波平との思い出も、今となってはありがたい。

今日、部屋の中で熱中症になりかけて、心底そう思った。
実家に帰省した瞬間。
もう家が暑いのなんのって。外より暑い。
気絶しそうになった。

お婆ちゃんに至っては、濡れタオルを頭と首に巻いてて。
ドバイの石油王かと思った。
石油王、シミーズとステテコ着てるけど。

実家、クーラーと冷蔵庫、同時に壊れてた。

そんなこと……ある?

クーラーに至ってはそこだけバイオハザードに備品提供したんかと思うくらい、赤茶色に錆びまくってる。

一年でそんなこと……なる?

リビングの一角で時空転移でも起こった?

そんなこんなで、家電買ってきました。
近所のイオンに。家族総出で。

私、車いすの母、知的障害のある弟、75歳の祖母。
先頭を歩く私に、全員なぜか縦列に続く。
もはやドラゴンクエスト。
イオンにあるバリアフリーというバリアフリーを、余すところなく使い倒すパーティ。

おかわり君にめちゃくちゃ似てる電気屋の店員さんが、
すっごく色々悩んで提案してくれて。

「4人家族ですと、この冷蔵庫なんてどうでしょう?」
「あー……車いすだと奥まで手が届かないね」
「こっちの奥行きが浅いモデルは?」
「おばあちゃんの力じゃ開けにくいね」
「自動でドアが開くオプションもありますよ」
「良太がわかりづらいかも」
「じゃあ、直感的にわかりやすいこの最新モデル」
「高い」

おかわり君……ごめんな……。

結局、おかわり君が1時間近くかけて難解なパズルを解き明かしてくれ、そこそこ良い冷蔵庫とクーラーを、そこそこの値段で手に入れることができました。

でも、迫りくる猛暑のせいで、クーラーの工事が全然予約取れなくて。
こんな滑り込みで、私たちが買いに来てしまったのが失策。
一番早くて来週の半ばの設置だったんですけど、来週の33℃超えを乗り切れる気がしない。
我が家の石油王の知恵を持ってしても。

それで、おかわり君が提供してくれたソリューションが「ひえひえくん」。
扇風機の後ろに、凍った保冷剤的なものを装着して、
冷風を起こすというひみつ道具。お値段1200円。
やっす。

しばらくの間、我が家の命運は「ひえひえくん」に託されました。

で、家に帰って、ひえひえくんを凍らせて。
寝苦しさ極まる夜21時、満を持しての初登板。

ただ、ね。
クーラーの代わりに登板してた、うちの扇風機投手が。
投球数を限界突破してたらしくて。見た目の割に。

ひえひえ君を設置した瞬間に。
視界から消えた。
スンッて。

保冷剤の重さに耐えきれなくて、投手の首が。
「あんた、そんなとこまで下がったの?」くらいに。
細かすぎて伝わらないモノマネ選手権の落とし穴みたいに。

瞬殺で埋まった。

扇風機、低っ!

なんとか冷風のおこぼれにあやかろうと思って、
家族でしゃがんで両手を当ててみたんだけど、
完全に、焚き火を囲む人たちみたいになっちゃって。

お互いに顔を見合わせて。
これはアカンと。

家が暑すぎて、2日連続でイオンを徘徊している家族が、うちです。
田舎のイオンは救世主!


P.S.
弟の記事にいただいたサポートのお金で、弟の大好物の中華を食べました。
弟がラーメンを独り占めするくらいにはしゃいでいました。
本当に、ありがとうございました。


週末にグループホームから帰ってくる弟や、ばあちゃんと美味しいものを食べます。中華料理が好きです。