見出し画像

白馬の王子様に、お茶を淹れてあげる才能がまるで無い

仮免許の学科試験に受かりました。
いやあ。順調、順調。
もうね、知ってるようで、知らないことばっか。
道路交通法って。

大人になった今、学べて良かった。本当。
なにが一番良かったかって。

白馬の王子様は軽車両扱いになる……ってことかな。

王子様、車道の左側を時速30kmで走る義務があった。

そりゃ、私のもとに来ねえわけだわ。

私の実家から出発したとして、ぶっ通しで16時間かかるし。
軽車両は下道しか走れないし。
たぶん、道の駅とかにも寄ってるだろうし。
羽曳野あたりの。
軽車両だから。

なんの音沙汰が無いのも、納得がいくよね。
運転中は、LINEも通話もできないんだもの。
軽車両だから。

最近はさ、警察も厳しいから。
検問にでも引っかかってんのかも。
生まれたての子馬育てるところから始まってても、なんらおかしくはない。
車検ならぬ馬検にさ、なかなか通らなかったりして。
軽車両だから。

と、言うわけで、こっちもね。
軽車両の到着に備えて、色々とね。
すげえ準備をしてるんですよ。女子力上げたりとか。

女子力と言えば、茶とか花とか料理とか、色々あるけど。
最近、思い知った。

私、絶望的に、お茶を淹れる才能が無かった。

会社でお客さんに出すお茶がね。
粉末タイプになったんですよ。

粉を、一杯ずつ、水に溶くの。
袋に山盛り入ってる「お〜いお茶」の粉を。
スティック状の小分けでも、スプーンが入ってるわけでもなく。
なんつうか、これ、完全に上級者向け。
己の目方に頼れ、と。

完全に私ったら、ひるんじゃって。

総務の人に聞いたら
「粉、紙コップの底が見えなくなるくらいがちょうどイイよ」って。
もう、その基準が既にツウっぽい。
料理の「塩少々」くらい難しい。

28年間、見よう見真似で、生きてきたけども。
「お〜いお茶」を溶かすっていう概念が、まるで無かったもんだから。
なんつーか、そっちの道、通ってこなかった人間だから。

まあ、でもね。

多少のね。
侘び寂びは、ある方だとね、自覚してた。
西山小学校の岸田っつったら、体育の時間に率先してトンボを持ち、
運動場に見事な枯山水を作ることで有名だったから。

私の中の、千利休を信じた。
立て茶柱!

んで、一杯作ったんですよ。

うん。
なんというか、不透明度100%の緑の色の液体。
お茶って、もうちょっと透き通ってなかったかなって。

「お〜いお茶」って言うか「お〜い?……お茶?」って感じ。
私の中の千利休も、首をかしげてる。

したら、私のお客さんが来てしまって。
メディアを手伝ってくださる、カメラマンさんだったんですけど。

ええい、ままよ!と。
私の中の千利休をねじ伏せて、お茶を持っていったわけです。

至極、なごやかな感じで打ち合わせが進みまして。
あまりのホッコリ空気感に、お茶のことを忘れてしまいまして。

一息ついた頃に、カメラマンさんがお茶を手に取ったんです。
瞬時に冷や汗かいて、恐る恐る、見てたら。

普通に、飲んだ。それも二口。
顔、しかめてない。
飲んだぞ。

私の中の千利休も、これにはニッコリ安堵の表情。
あー、良かったって。私も飲んだ。
油断してた。完全に油断してた。

「ゴッホ!!!!!!!!!!」

思わず飛び出た。印象派。

濃い。
なんつーか、ただひたすらに濃い。
飲んだ瞬間、喉にジャパンが流れ込んでくる。
建国2679年を、凝縮した味がする。
脳に“死”の文字が浮かぶ濃度。

カップ置いたら、ゴボォって緑の泡と粉が浮いてきて。
あ、これ見たことあるわ。
ドラクエの毒の沼だわ。

「あわ!あわわわ!ごごごごめんなさい!これ濃いですよね!?」

慌てて謝ったら、カメラマンさんも慌て始めて。

「あっ、やっ、やっぱり?こういうものなのかなあ、おかしいなあ?って思って、もう一回飲んだんですけど」
「違います、違います!ごめんなさい、取り替えます」
「いやいやいや!これはこれで!」
「えっ。それ、飲めます?」
「飲めま……いや……う〜ん……飲め……飲めないです!

ですよねー!

とんだ茶テロを起こしてしまったのが、先週のハイライト。
打ち合わせは無事に済みました。
カメラマンさん、本当に……本当に……ありがとうございます。

一部始終を見てた後輩から
「作ってる時から、奈美さん大丈夫かなって思ってたんですけど、やっぱり大丈夫じゃなかったですね」
って言われたんですけど、教えてよ!ねえ!

来年の今頃には、白馬の王子様から「結構なお点前ですね」と言われたい。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

記事にいただいたサポートのお金で、母や弟(岸田家)と「したことない体験」に挑戦し、新しく記事を書きます。いつも応援ありがとうございます!

スキに圧倒的感謝
474
28歳の作家。100文字で済むことを2000文字で伝える。車いすユーザーの母、ダウン症の弟、亡くなった父の話など。講談社・小説現代 連載、文藝春秋2020年1月号巻頭随筆 執筆。コルク所属。 Official WEB→https://kishidanami.com/

こちらでもピックアップされています

岸田奈美
岸田奈美
  • 34本
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。