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【キナリ杯受賞発表】特別リスペクト賞②

特別リスペクト賞6「ほぼ日刊キシダ新聞賞」

「やさしく、つよく、おもしろく」な文章に贈る賞です。糸井重里さん、倉持奈々さんたちのいるほぼ日の皆さんをリスペクトしました。

タイトルがまず、いいですよね。親子の写真って一般的な家庭にはもっとキラキラフワフワしたものがあると思うんですが、親子ともに虚無感のあふれる写真をヘッダーにしている、捨て身の勇気が素晴らしいです。たぶん、ものすごく、たいへんなことが起こってるんだろうなと予想できます。もしこの写真しかなかったとしても、それはそれで、なんか愛しいぞ。

この記事はたぶん、子育てをした方々は「うわああああ、わかるうううう」ってのたうち回っちゃうんじゃないですかね。そういう共感って「描写の細かさ」と「作者への好感」からくると思うんですけど、その両方が浜田さんの記事にあふれてます。

他人と比べてしまう、途方もなく焦ってしまう、そんなたいへんな状況をヒステリックに書き散らすでもなく、自分を卑下しすぎるでもなく、当時の感情と事象を軽やかにおもしろく書いている。だからクスッと笑えるし、共感もできる。お子さんにも、同じ経験をした人にも、すべての人に優しくありたいと願う、浜田さんの愛がなければ書けない文章です。めっちゃえらそうやな、わたし。ごめんなさい。

長い長いもやもやを抜けて、光へと向かうラストも気持ちいいです。毎日の日記をていねいにまとめたような、素敵な記事でした。


特別リスペクト賞7「あ、そうかも賞」

どうでもいいことを考え、空想や妄想をしている文章に贈る賞です。浅生鴨さんをリスペクトしました。

応募作品のなかでも随一の狂気を放っていた、小山コータローさんの映画評論。まずこれ、書かれていることに「本当」がほとんど見当たらない。ほぼすべてが「嘘」なわけ。

どういうこと?

評論されているのはすべて存在しない映画であり、小山さんは「普段は地下室で、複数人の半裸男(国籍不明)と4コマ漫画を描く工場」に勤めており、評論を書こうとするとドアの外からママさんが諭してくるそうです。

どういうこと?

受賞作の講評で「どういうこと?」って言うことあるかな。でも言わずにはいられない。書かれていることはデタラメで、よくわからない単語やキャラクターが息をするように出てくるので、もれなく小脳がバグります。でも、そのすべてに確かな世界観が存在していて、気がつけば小山ワールドに引きずり込まれてしまう。追いつかないほどのツッコミを連発してしまう。

宇宙人の目線なので、人間たちが逃げ惑う後ろ姿や、宇宙人が自炊してる時の手元などがスクリーンに映し出されていました。

なんかわからんけど、ここでめっちゃ笑いました。対比がすごいんだよな。そんで、ていねいな暮らしを取り上げる系の映像あるあるなんだよな、自炊してる時の手元映りがち。

ここまで世界観が作られている絶妙な嘘は、もはや嘘ではなく、空想です。人々を夢中にさせる物語の種です。

※あ、そうかも賞には浅生鴨さんの好意によりモンブランの高級万年筆と、ガンダムのザビ家モデルのプレミアム万年筆が贈呈されます。どういうこと?


特別リスペクト賞8「言葉ダイエット賞」

言葉の贅肉を削ぎ落とし、みんなが読みやすい文章に贈る賞です。コピーライター・橋口幸生さんをリスペクトしました。

たぶんこの小林さんは、相当に三浦春馬が大好きだと思うんですよ。なにせ愛知県の美術館まで行くくらいなので。それくらい好きな相手のことって、ながなが、だらだら、ウルトラハイテンションで読み手のことなど考えず、書きなぐってしまいたくなると思うんです。念仏と布教のはざまで生まれる狂気の文章というか。

あえて、あふれんばかりの好意とグッと抑え込み、シンプルで短い言葉でつづっている精神力に敬意を表します。この文章、スマホで読んでもサクサク読めるんです。わたしがnoteを書くときに一番意識していることなので、それをすることの手間はよくわかる。読者のことを思いやって手間をかけている記事は、もれなく読者から愛される。だから私は、小林さんのことも、小林さんが語る三浦春馬さんのことも、好きになりました。

とはいえ、ちょこちょこ抑え込めてない欲望や漏れ出た感情が垣間見えて、それもまたおもしろいです。「そうだ、私一人だったわあ。」とかね。


特別リスペクト賞9「たらればワンワン賞」

ニコニコして前向きな気分になれそうな文章、もしくはFate/Grand Orderについて語る文章に贈る賞です。アルファツイッタラー・たらればさんをリスペクトしました。

なんかね、にこにこしちゃうの。大人が初めて食べたものを一生懸命書いてて、にこにこしちゃうの。はじめてのおつかいを観ている気分。だれにも内緒でお出かけしよう。

シンプルな日記のように思えて「なめらか味」「度肝を抜かれたのが砂肝」「地球とか大地を圧縮したみたいな味」「ふ〜」「いざテストを受けてみたら余裕すぎて実力が出しきれなかった餃子」などの謎語録に、ぐいぐい引き込まれちゃう。

初めて食べたものの感想を、素直に書くことで、こんなにも人柄がにじみ出てくるのかとびっくりしました。大人なのに、どうしてお母さんやお父さんに報告するみたいなワクワクする語り口を貫いているんだろうと思ったら、最後の種明かしパートでじんわりきます。もう一度読み返したくなる。

これからもずっと、初めて食べたものを書き続けてほしいな、と思ってしまいます。


特別リスペクト賞10「令和の大恋愛賞」

新しい時代、おおっぴらに恋愛を叫んでくれた文章に贈る賞です。トイアンナさんをリスペクトしました。

あまりこの言葉は使わないようにしているんですけど、使ってしまうくらいこの記事は「エモい」です。エモいってこういうことか、と妙に納得もしてしまいました。

彼から言われた、強烈な印象に残っている言葉がタイトルになっているのも素敵。この言葉がずっと頭にこびりついているであろう、ひさとみさんの心がわかるような気がして、ぎゅうううとなります。

季節がめぐるごとにシーンが移り変わる、区切りのつけかたが本当に良いです。幕間の心情や会話もなんとなく想像ができて、 映画みたい。実際にあったお話ですが、地の文の説明で済むところをあえてセリフにしてあって、そのセリフの作り方や差し込む場所も絶妙で、ひさとみさんは小説づくりもめちゃくちゃ上手いんだろうな、と勝手に想像しました。しかも自分にとって苦い味でもある記憶を、あえて外に出し、読んでいておもしろい文章にしているところも、ひさとみさん自身のエモエモさをすごく感じます。エモい。


特別リスペクト賞11「なに考えてんで賞」

なに考えてんだ!と言いたくなるような文章に贈る賞です。デザイナー・前田高志さんをリスペクトしました。

まさかのnoteの文章で勝負するのではなく、noteのリアクションで勝負をしかけてきた異色の作品。本当になに考えてるんだ。褒め言葉です。

やっぱり、誰かを傷つけるのではなく、誰かを愛することによってにじみ出てくるヤバさほど愛しいものはないですね。noteへの重い愛情がひしひしと伝わってきます。

ただ単に、ウケやシュールを狙っただけの記事ならば選べなかったのですが、なにげに「フリー素材を使っている」「取り上げたリアクションの作者をちゃんと紹介して、リンクを繋げている」という、極めてクレバーな気づかいもしっかりあって、あっぱれ。毎晩射撃練習とメンテナンスやってるタイプの無鉄砲みたい。


特別リスペクト賞12「STAY AT SWEET MY HOME賞」

お家(暮らしや引越しを含む)にまつわる文章に贈る賞です。応援してくださった、空き家活用株式会社さんをリスペクトしました。

ずっと家で外出自粛してると元気がなくなる。パグは人を元気にする。だから家でパグを買う。

令和を代表する見事な三段論法です。

もうこれだけですべてがわかりますね。わたしが解説せずとも、なぜこの賞に選んだか。パグに限らず、小さく愛しきものが家にいるというのは素晴らしいことです。しかもこの記事には、お子さんとパグが出ているので、その効果は二倍になります。あまりにも人をだめにするので、この両方を家に取り入れると投獄される国もあるほどです。

全体的に、写真と文章を読んでいくと「アッ」「ファッ」「しゅき」と徐々に語彙力をなくしていくのですが、最終的にお子さんが犬に嫉妬して床にへばりつく図を見て、二言ほどの言葉もついに失います。そして世界は、幸せな沈黙で満たされる。

小さく愛しきものが家にいる人は、どんどんnoteを書いてほしい。それがどこかのだれかを救う、三段論法になるはずだから。


特別リスペクト賞13「素振りでホームラン賞」

今回のキナリ杯で初めてnoteに登録して投稿した文章に贈る賞です。ブロガーの徳力基彦さんをリスペクトしました。

はじめてのnote投稿、本当にお疲れさまです。世界史の鳩さんに限らず、はじめて投稿した人はみんな尊いです。その中でなぜこの作品を選んだかというと、初めての投稿なのに、身近な人を巻き込み、一生懸命人を楽しませようとし、自分の得意分野や知識を惜しげもなく放出するという努力と人柄に胸を打たれたからです。

冒頭の鳩マスクね、紛れもなく出オチなんですよ。

たぶん中学生くらいでもわかるんですよ。「あっ、これ出オチるわ」と。初舞台だったらね、やっぱそこでブレーキ踏むと思うんですけど、世界史の鳩さんは迷いながらも全力でアクセル踏んできた。しかも、恐らく戸惑ってるであろう奥様をも巻き込んで。で、たぶん持ってるのはハリーポッターの杖ですよね。USJで買ったんですかね。そういう家中のものをひっくり返して用意して、とりあえず今できる最善を尽くそうという姿勢も、好感しかないです。

さすが世界史の先生!って感じで、王安石の話は詳しくて、わかりやすい。わたし歴史あんまり得意じゃないんですけど、ちゃんとわかりました。それだけじゃなくて、最後に自作の似顔絵まで書いてきて、もうこの人はどこまで一生懸命なんや、ともっと好きになってしまった。専門知識の無駄遣い、もちろん嫌いじゃないです。

※この記事にいただいたサポート(投げ銭)は、すべて岸田のタピオカミルクティー代に消えます。甘いものが飲みたい。


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スキに圧倒的感謝
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28歳の作家。100文字で済むことを2000文字で伝える。車いすユーザーの母、ダウン症の弟、亡くなった父の話など。講談社・小説現代 連載、文藝春秋2020年1月号巻頭随筆 執筆。コルク所属。 Official WEB→https://kishidanami.com/

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コメント (1)
受賞作を読んでいくうちに、これらを審査するの、めっちゃ大変やったやろうなあーという気持ちがどんどん大きくなってくる。
ほんまに凄い。
ありがとうございます。
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