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【キナリ杯受賞発表】特別リスペクト賞④

特別リスペクト賞21「美しいあの日の思い出賞」

生まれ育った街、暮らした部屋、通った学校、時間を潰した公園など、懐かしい思い出を美しく書いている文章に贈る賞です。亡くなったわたしの父の大切な思い出を共有してくださっている、島田福太郎さんをリスペクトしました。

瀧波さんからこんな風に書いてもらえて、洋菓子屋さんはとても嬉しいと思うの。わたしが洋菓子屋さんだったら、泣いちゃう。洋菓子屋さんだったことはないけど。でも、自分が一生懸命作ったものが、こうやって誰かの記憶にひっかかって、大切な思い出になっていて、また別の誰かに伝えたくなっていたら、やっぱりわたしは嬉しくて泣いちゃうと思うの。

一人のほほえましい成長に、花を添えるように何度も登場してくる洋菓子屋さん。まるでお店の雰囲気や店員さんの暖かさが伝わってくるようだし、ケーキと思い出の結びつき方がとにかく天才的というか、芸術的です。お酒の匂いがして子どもの口には少しほろ苦いオペラと、大人に謝ることができなかったながく罰の悪い思い出。最高かよ。オペラ食べながら泣くわ。

連続ドラマの主人公が雇われるタイプの、「まだ無名だが奇跡ほど技術が高くて有名パティシエにガンガン一泡ふかせ続ける伝説の店」ではなかった。

かと思えば、連続ドラマの主人公の店がガッシガシにエッジが効いた言われ方をしていて笑ってしまいました。瀧波さんの人生に、これからも美味しいケーキがそばにいますように。


特別リスペクト賞22「あなたもホンシェルジュ賞」

本や読書との出会いについて書かれた文章に贈る賞です。応援してくださった、ホンシェルジュの東海林真之さんをリスペクトしました。

本をまとめて紹介する記事っていうのはこれまでも世の中にたくさんありましたが、「なにを選んだか」に圧倒的な比重が傾くと思うんです。これは「なんで選んだか」に圧倒的な比重が傾いています。しかもその目的は、女性と付き合うため。潔すぎる。武士か。いや武士はそんなこと言わんわ。

氷壁にアイスアックスさんは、マニアックな趣味を持つ女性を求めているので、書評もマニアックです。わたしは一冊も知っている本がありませんでしたし、なんなら書評自体も取り上げている点がわりと小難しくて、頭に入りやすいかと言うとそうではなく。でもそれでいいんです。なぜならこの書評がぶっ刺さる女性に向けて、書かれた書評なのだから。そんな明確な目的意識を持った書評があるのか。首をはねられても目的意識だけで2ヶ月は生き延びそうな書評である。目的と趣味を兼ね備えた、あたらしい書評の可能性を知ってしまいました。

2chで使われるAAや顔文字の中でしか見たことのないような全然読めない文字を『はじめてのロシア語』的な本を頼りに何とか解読し、警察に空バウチャーを咎められる前にギリギリ宿を確保するのに必死で、全くもってそれどころでなかったのは、胸の内にしまっておきたいと思う。

このアスキーアートの例示も含めたくだり、おもしろかったです。それすらも、ギャップで好感度を上げるための計算なのか、と感心してしまう。術中にはまっている。noteで素敵な女性に巡り会えるといいですね。


特別リスペクト賞23「2億%大丈夫で賞」

「大丈夫だよ」と言いたくなるような、言われた気分になるような優しい文章に贈る賞です。わたしの母・岸田ひろ実をリスペクトしました。なんでか母もキナリ杯にエントリーしてて笑う。

障害のあるお母さんと一緒に暮らす、たろべえさんの話です。

お母さんは、高校生の時、通学中に交通事故に遭いました。身体には右半身麻痺が残り、移動する際には杖かシルバーカーを使っています。加えて、高次脳機能障害も残りました。高次脳機能障害とは脳が損傷を受けた際に起こる障害全般を指し、人によって様々な症状が現れます。私の母の場合は特に記憶力に障害があり、今日の日付が答えられない、同じことを何度も聞く、迷子になる、さっきまでしていたことを忘れてしまうなどの症状があります。

記事ではこうやって淡々と説明されていますが、いろんな大変さや苦労があっての今なんじゃないかなと思います。それまでできたことができなくなる、というのは、本人にとっても、家族にとっても、かなりの苦しみと痛みを伴うものだからです。

でも、たろべえさんはそんなお母さんの「障害があること」を「宇宙人」だとチャーミングに表現しているんです。宇宙人だから言葉に不慣れなんだ、他の人と違うところがたくさんあるんだ、と思うために。人生も人間も多面的です。事実は同じでも、捉え方によって、真実はいくらでも変わる。生きる強さであり、たろべえさんがお母さんと愛のある暮らしをこれからも続けていくために選びとったものが、ものすごく素敵だなと思いました。

ピポピポピポ……ピポピポピポ…こちら地球…宇宙人、応答せよ、応答せよ…。 

まさか障害のあるお母さんについて話すとは思えない、この書き出しもすごい。そこに悲壮感はまったくなくて、あるのは、見守っていたくなる家族のユーモアが効いた風景です。


特別リスペクト賞24「それ、幡野さんに聞いてみよか賞」

自分の中にある悩みや葛藤や不安について書いている文章に贈る賞です。カメラマンで作家の幡野広志さんをリスペクトしました。

わたしのことを書いていらっしゃるのかと思ってしまうくらい、わかりみが深すぎて泡を吹くかと思いました。そう、わたしもめんどくさい女が嫌いなのに、ふたを開けてみれば自分こそがめんどくさい女だったのです。だから一緒に幡野さんに相談しに行きませんか、とすがりつくような思いを込めて選ばせてもらいました。

めんどくさいと言われたことに動揺しつつ、冷静に自分の現状を分析し、納得するような相槌や心情を入れつつ、結局まためんどくさい思考に戻ってしまう。悩んでいる人あるあるの、言葉にしづらいループを、noteで文章にして再現してくれました。コニシさんの脳内劇場って感じです。

最初に男たちの会話が引用されているのですが、最後にその会話へ意味を見出して、得意げになっているというのがコニシさんのかわいさが出ていて、良いなあと思いました。


特別リスペクト賞25「応援!エンタメワクワク賞」

音楽・アート・タレントなどのアーティストやエンタメを応援している文章に贈る賞です。応援してくださったポータルサービス・オーエンズをリスペクトしました。

ヨルシカ、良いですよね。独特の澄んだ世界観があって、わたしも大好きです。だけど、サトウさんが自分で選んで添えた言葉が、ヨルシカの世界観にマッチしていて、すごく良いなと思いました。

誰もが持っているどこかの夏に、連れて行ってくれる歌がある。
小麦色の肌で入道雲に追いつこうとした昼下がり。闇に光る花火を想って恋の意味を知った夜。
音楽が記憶と結びつくと、目を閉じて手繰り寄せる感情の濃度が増す。

たとえばこの文章。めちゃくちゃ美しくないですか。こんなのが書けるということは、サトウさんはたぶん、すごく上手なエッセイや小説などが書ける方だと思うんです。でもその能力を惜しげもなく、自分のためではなく、ヨルシカのために使っている。スキルやセンスを、誰かにギブできる人っていうのは、本当に強くてかっこよくて素敵です。

今年はきっと、いくつものピースが抜け落ちたパズルのような夏を見る。

こんなにも気持ちいい、曲紹介の〆がありますか。いいや、ない。


特別リスペクト賞26「スズメバチのルンバ賞」

生命の尊さ、儚さ、美しさを書いた文章に贈る賞です。スズメバチとルンバの死闘をリスペクトしました。

すみません、白状すると、これは完全にノリで作ってしまった賞なのですが、読んだ瞬間に「この作品しかないわ」と思ってしまいました。審査員のわたしの話やんか、というブーイングがあるかもしれません、ごもっともです。だけどわたしは確かに、この漫画を読んで救われたのです。わたしの知識と度量がないばかりにつらい思いをさせてしまったスズメバチのことを、後悔していました。たとえ創作の中だけでも、元気でかわいいスズメバチが見れて、嬉しかったんです。完全に賞を狙い撃ちしている投稿で笑ってしまいましたが、でも、その狙い撃ちに救われました。ありがとうございます。


特別リスペクト賞27「モンスターズ賞」

モンスターのようなインパクトのある文章に贈る賞です。応援してくださった、中卒モンスターズの尾花龍一さんをリスペクトしました。

いらすとやさんの絵と、図式を組み合わせた文章は、もれなく企画がモンスター級にブッ飛んでいておもしろいのでは説がわたしの中で立証されつつあります。目のつけどころがおもしろかったです。

良い歌詞、すなわち良い文章の作り方を「飛距離のある」と表現しているのが、センスあるなあ。しかもちゃんと飛距離が分析されて、証明されているんですよ。めちゃくちゃわかりやすい。誰でも実践できちゃうから、実用的な良記事。日常生活で韻を踏む必要性にかられる人がどんだけいるのかは別として。

ラップを題材にしているのに、エクセルでパンチラインを抽出してまとめているところとか、特徴を箇条書きにしているところとか、妙に丁寧で気がきくという細やかさもジワジワきました。






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スキに圧倒的感謝
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28歳の作家。100文字で済むことを2000文字で伝える。車いすユーザーの母、ダウン症の弟、亡くなった父の話など。講談社・小説現代 連載、文藝春秋2020年1月号巻頭随筆 執筆。コルク所属。 Official WEB→https://kishidanami.com/

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コメント (1)
今回も、良い作品と出会わせてくれて、ありがとうございます^^
受賞作がどれも素晴らしすぎて、もう自分が受賞してるかどうかのドキドキ感どっか行った(嗤)
良い作品に出会えるのが楽しみ*
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