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岸田奈美のキナリ★マガジン

新作を月4本+過去作300本以上が読み放題。岸田家の収入の9割を占める、生きてゆくための恥さらしマガジン。購読してくださる皆さんは遠い親戚のような存在なのです!いつもありがとう!
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運営しているクリエイター

#家族

ハイスピード・タートルよ、永遠に

月曜の深夜、タイムラインに衝撃があらわれた。 カメがスケボーに乗っている動画だった。 だ…

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姉と弟の飲酒教習

その日、岸田家に爆風が吹き荒れた。 「良太さんが、お酒を飲んでしまいました」 なっ…… …

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「たまたき」

聞き慣れたばあちゃんの声の、聞き慣れない四文字が、スマートフォンのスピーカーから響いてい…

足りない年の瀬の泥人形

「さっき先生が回診にきはって……傷の治りが思ったより遅いから、年内の退院も無理やて……」…

病院送り・ダ・カーポ

母が総胆管結石で深夜に緊急入院した。なんやかんやあって、手術室に入ったのはお昼だった。 …

背負わない新聞の季節

「しんどひい」 月曜日、母から電話があった。 2週間前からお腹の痛みをうったえ、先週、病…

歯医者の付添いの味

弟を歯医者に連れていくこととなった。 ハミガキ無精がたたって小さな虫歯を作っては埋め、作っては埋めしている万年工事中の姉とはちがい、弟はハミガキでもうがいでも、たっぷり時間をかけてやる。 だから歯が痛いということはないのだが、夕食の席で母がふと、 「良太……歯、ちっちゃなってない?」 と箸を止めて言った。 もともと小粒な歯をそろえている弟は、茶碗の白米を飲むようにペロンチョしていた。 「そうか?こんなもんちゃうの」 「気になるわあ。もう何年も歯医者行ってないし、

車を使わずにドライブスルーしはじめた時、母は希望を掴む

このnoteは、ひとつ前に書いたnote↓の後編です。 十五年前、母が長期入院をしていた話の続き…

姉のはなむけ(姉のはなむけ日記/最終話)

季節が変わった。 朝、目が冷めた瞬間、汗ばんでいないことに気づいた。あんまり暑くない。こ…

お金では手に入らなかったもの(姉のはなむけ日記/第22話)

しゃべりが、達者になった。 週末、実家へ帰るごとに、おどろいてしまう。弟のしゃべりが、目…

飽きっぽいから、愛っぽい|エッセイを書くということ @パソコンの前で

キナリ☆マガジン購読者限定で、「小説現代9月号」に掲載している連載エッセイ全文をnoteでも…

通報する神あれば、親切する神あり(姉のはなむけ日記/第17話)

弟がグループホームへ本入居することに決まったので、そうと決まれば、いろいろと決まりごとの…

飽きっぽいから、愛っぽい|ホラ吹きの車窓から@静岡県新富士駅のあたり

キナリ☆マガジン購読者限定で、「小説現代8月号」に掲載している連載エッセイ全文をnoteでも…

細川たかしはここにいたい(姉のはなむけ日記/第13話)

弟の、グループホームでの体験宿泊がはじまった。月曜日から、二泊三日。 部屋に貼ってあるカレンダーには「グループホーム」と書かれていた。実際には「クルーポヘーム」だったけど。 通ってる福祉作業所でも 「あさってからぼく、グループホームです」 「ぼく、いくからね。グループホーム」 と、スタッフさんやお仲間に伝えていたそうだ。 出発の前夜。 水色のボストンバッグに、弟が荷物を詰めた。わたしは服など両手でねり飴を練るようにグルグルっとやって秒でカバンに突っ込むだけだが、